島のアンのメモ : 11章

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島のアン:11章のメモ

Anne was back in Avonlea with the luster of the Thorburn Scholarship on her brow.
額に押された刻印のイメージだろう。 [黙示録,007:003]
Saying, Hurt not the earth, neither the sea, nor the trees,
till we have sealed the servants of our God in their
foreheads.
そしてこう言った。地を滅ぼすことなかれ、海を、森を滅ぼすことなかれ、
我ら[天使達]が神の僕の額に徴を押すまでは。
額に押された徴は、神に選ばれし者だけでなく、望ましくない者の徴(獣の徴)の場合もある。
he had mustered enough spunk to ask the fateful question himself
mustered(勇気を奮い起こす)は、 [日記(E)1,p.55,June 30, 1891] にある。
Mustard actually mustered -- oh, forgive the pun.
LMMに言い寄っていたMr. Mustardが、遂にプロポーズに踏み切った時のこと。
Can't get a beau in Avonlea
この文と次の文で主語が抜けている。 フランクな言い方だが、レイチェルはAGGではこんな言い方はしていない。 AAあたりから、実際の喋り方に近づけてきていると思う。
she was very thin; the hands that held her hymn-book were almost transparent in their delicacy.
美人薄命を地で行くルビーである。 本来の美しさに加えて、病的な美しさとはかなさは、 地上の人から天上の人へと移り行く過程を象徴している。
galloping consumption
奔馬性肺結核 [リーダーズ+] 。奔馬性ではピンとこないので進行性にした。
"Ruby Gillis is dying of galloping consumption," said Mrs. Lynde bluntly
bluntlyは、ルビーの"almost transparent in their delicacy"と対応。 語り/アンの目から見た、元気に生きていくレイチェルと、死に行くルビーの対比である。
attack of congestion
congestionは医学用語で鬱血, 充血 [リーダーズ+] で、喀血はhemoptysis。 [OED] では、 1875年 B. Richardson Dis. Mod. Life 65の例、 "The diseases included under the names of catarrh, bronchitis, congestive bronchitis, congestion of the lungs, pneumonia." が挙げられている。ここでは肺の鬱血であり、結果的に喀血になるんだろうか。
Ruby, the brilliant, the merry, the coquettish!
brilliantは宝石のルビーのイメージだろう。
I'm dying for a good talk with you.
これは文字通り意味が取れる。ルビーは意識して言ったのだろうか?
the red, twilit road
夕暮れの道の赤さは血のイメージだろう。次の注を参照。
The robins were singing vespers in the high treetops, filling the golden air with their jubilant voices.
robinは赤い胸(redbreast)で、肺を患うルビーのことだろう。 これも血(喀血か?)のイメージ。もうすぐ終わる人生を、精一杯歌うルビーである。 vesperは晩祷の鐘(vesper bell)の意味もあり [リーダーズ+] 、人生の終わりを告げる鐘の音が聞こえてきそうである。 心なしか、Rubyとrobbinも音が似ているように感じる。
The silver fluting of the frogs
蛙の声の役割ははっきりしないが、そんなに悪いイメージではない。 Aristophanesの喜劇"The Frogs"は、三途の川(Styx)で歌う蛙の合唱隊からとられた [リーダーズ+] そうだが、陽の光や雨と同じように、いずれ人生に死が降りかかることを意味するのだろうか。
あるいは、silver fluteはギリシャの神パン(Pan)の笛で、 人生の盛りや楽しさを意味するのだろうか。
seeds were beginning to stir with life and thrill to the sunshine and rain that had drifted over them
畑に植えられ伸び始めた種子は、アヴォンリーの若者たち。 命に溢れ(with life)、自分の身に降りかかる(drifted over them)良いこと(sunshine)にも、 悪いこと(rain)にも身を震わせ(thrill)る。
young raspberry copses
copseはcoppiceのことで低林などの意味 [リーダーズ+] 。ここではキイチゴの茂みの意味だろうか。
うがった読み方をすると、濃い赤のraspberryはルビーで、 若い(young)ルビー(raspberry)の体(corpse←copse)になる。 しかし、死に際のルビーは荒々しく(wild)、美しい(sweet)が、 健康そうな(wholesome)と言えるだろうか?
あるいは先のseedsと同じで、若々しく元気な若者一般を指すのだろうか。
White mists were hovering in the silent hollows
もやが立ち篭めはじめた窪地(hollows)は、 AGG 15章に現われるViolet Valeを含むのか? "Violet Vale--a little green dimple in the shadow of Mr. Andrew Bell's big woods" 次の注を参照。
hollowsは空虚なこの世あるいはアヴォンリーで、 この先が見えなくなって行くこと?霧のように立ち篭める不安?意味不明。
violet stars were shining bluely on the brooklands
violet starsはViolet Valeに咲くスミレの星のような形の花だろうか。 とすると、brooklandsは小川が流れる湿地とみて良いのではないか?
季節がはっきり分からないが、冬が終わって、まだ秋がきていないので、 春か夏、たぶんスミレの咲く春なのだろう。
控え目な/無口な星達(voilet stars)はアンとダイアナで、陰鬱だった(bluely)のか? white mistsのsilentと共に、voiletで静けさを描写している。 意味不明。
it's just like a land in itself, isn't it?
ダイアナがこんなことを言うようになったのは、アンに影響された結果だろうか? それとも、アンと自分の気を引き立たせようと、アンが気に入りそうな話題を提供した、 ということ?
Paul wrote of in his old composition
AA, 11章のポールの作文を参照。 "The sunset is a land all flowers. We sailed into a great garden, and the clouds are beds of flowers."
Elisha Wright
Elishaは旧約聖書に登場するエリシャで、預言者エリヤの弟子 [列王記上] [列王記下] 。正しい(right)預言者の意味か?情報不足で意味不明。
"You don't mind calling in at Elisha Wright's for a moment, do you?" asked Diana.
ダイアナが強制的に話題を変えたが、アンは話題についてきていない。
Aunt Atossa
Atossaはペルシアのダリウス大王(550-486 B.C.)の妃 [リーダーズ+] 。偉そうな名前である。
Aunt Atossa was cutting potato sets
setは挿し木, 若木, 苗, 球根 [リーダーズ+] 。村岡訳では種。種芋のことだろうか?
People who can't work aren't wanted here.
アトッサの、Peopleで始まる警句風の発言は後で繰り返される。 これも嫌われる原因だろう。
all forebodings upon the occasion of George Barry's marriage had been amply and darkly fulfilled.
これは「眠り姫」を下敷きにしていると思う。つまり、アトッサ叔母さんは、 眠り姫たるジョージ・バリーの、誕生日ならぬ華燭の典に招かれた(白)魔女の一人、 ということ。あるいは疎んじられた黒魔女? アトッサ叔母さんの風貌も古典的な魔女風。
Sometimes they even die
良く分からないが、アトッサ叔母さんの亡くなった夫のことか? アトッサ叔母さんの性格では、何処かにでかけるというのはなさそうに思えるので、 アトッサ氏も出かけることが少なかったのではないだろうか。
性格の良いダイアナが酷いあてこすりをするとも思えず、やっぱり一般論?
I hear you are to be married in June, Diana.
アトッサ叔母さんは、形勢が悪くなると話題を変えて、常に勝ちを確保しようとする。 だから嫌われるんだろう。
I s'pose we're all as the Lord made us!
本人は分かってないようだが、自分に対する皮肉になっている。 髪の色に関しては、AGG 9章のリンド夫人の発言と同じ主旨。 "Her temper matches her hair I guess."
think of living all your life with a name like Atossa!
Atossa、AGG 2章のHepzibah、AGG 5章のJedediahなど、 外来の名前は奇妙に聞こえるのだろう。
Cordelia
AGG 3章のコーデリアのことだが、ここでアンは、 シェークスピアの控え目なコーデリア姫の意味でも言っていると思う。 Cordelia を参照。
I didn't like ANNE
AGG 3章では、"Anne is such an unromantic name.", "I'm not ashamed of it, only I like Cordelia better."と言っているが、 実は好きじゃなかったと、ようやく素直に白状できるようになった?
amen
ヘブライ語で「かくあらせたまえ」 (So be it!) [リーダーズ+] 。その通り、と同意する意味なので余計に可笑しい。
remarked Anne
the minister, ... , immediately remarkedに対応させているのだろう。
Leonard Kimball, of Spencervale, and Morgan Bell, of Carmody, were glaring at each other across the parlor.
二人が対立しているのは、楽しそうなのは見かけだけ、という暗示だろうか。 一瞬心が通った後でまた離れてしまう、アンとルビーのことだろうか?
Ruby was dressed in white and her eyes and cheeks were very brilliant.
白いドレスは血の気の無さを意識させないため?死に装束の白? ここでもbrilliantが繰り返される。
Ruby slipped her arm about Anne's waist with a shallow little laugh.
腰に手を回した(理解を求める心)のと、薄っぺらな笑い(理解の可能性を否定する心)は、 矛盾する行動だろう。ルビーは理解して貰えないのではないかと恐がっている。
the luster of Ruby's
Rubyの瞳の光沢は、宝石のルビーの光沢(the luster of rubies)をイメージしているのだろうか。
Anne saw something that made her heart ache.
アンが本来持っていて、 マシューによって強化された共感(sympathy)の心がそうさせたのだろう。 残念ながら神ならぬ身のアンは、誰にでも共感できるわけではない。
また同時に、物事の皮相ではなく本質を見抜く、 あるいは本質を理解したいと願うアン/LMMの心のありようも示していると思う。
Come up often, won't you, Anne?
喋り始めは普通だが、wont' youからすがるような響きになる。
Are you feeling quite well, Ruby?
たぶんリンド夫人や他の人からも繰り返された言葉。 ルビーとしては、アンから聞くとは思わなかったのかもしれない。
Ruby's voice was almost sharp.
AGG 28章でヒステリーになった、昔のルビーがここにいる。 さっきまでの小さな、低いといって良い声から、 突然、ヒステリックな金切り声に変わっていく。
as if in resentment
どうしてそんなこと言うのよ、もっと優しい言葉を期待してたのに、ということ? 話してしまった後悔もあったのだろうか?
where she was gayer than ever
アンとルビーが訪れたギリス家がgayだったのは、全く見せかけだったということ。
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osawa@物語倶楽部
更新日:2004/12/31