メモ:34章

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34章 クイーン校の女学生に

delicate pale green material
AGG(J):33章 でマリラはオーガンディーに批判的だったが、こんどはわざわざunserviceableな(?)生地を選んだ。
腕に抱えた生地がpale greenなのは、 アンを手放すマリラの顔が青白いからだろうか(paleもgrenも青白い顔色の意味)。 [Sullivan Entertainment] の映画でも、アンがクイーンの受験会場で"green"になったとステイシー先生から言われたはず。
we'll get Emily Gillis to make it for you.
これも本来ならアンか自分が縫うはずのところを、腕の良い人にまかせたので、 マリラとしては手間をかけている。
butterfly kiss
[リーダーズ+] では、俗語でウインクしてまつ毛で相手の顔をなでることとある。 [OED] でみると、1871年にGeorge Eliot, "Middlem", I. i. v.にbutterfly kissがあるが、同じものか不明。 1932年の用例では、「まつげでキスするのがバタフライ・キスと呼ばれ、私はずっと前から知っている」 というのがみつかって、 [リーダーズ+] と同じ意味。
アンのバタフライ・キスは時代的にはエリオットにでてくるものと同じだろうが、 いずれにしてもあまり一般的ではなかったような雰囲気である。 ここではアンが気取ったキスをした程度の意味でOK?
butterflyには落着きのないイメージがあって、あまり良い意味が見つからない。 AIs(J):14章 でも、浮ついたルビーの形容にbutterflyが使われている。 アンが(マリラからみて)浮ついた雰囲気だということなんだろうか?
I'm only just pruned down and branched out.
The Branch(枝)と呼ばれたJoshuaが王座について、神殿を建てるエピソード [ゼカリヤ書,006:012] がある。枝を伸ばしたアンはJoshuaであり、 神殿ならぬ売られかかったグリーン・ゲイブルズを守ることに関係ありそうな気もするが...
And speak unto him, saying, Thus speaketh the LORD of hosts, saying, Behold the man whose name is The BRANCH; and he shall grow up out of his place, and he shall build the temple of the LORD:
そしてヨシュアに向かって話すのだ。つまり、天帝はこう言っている、 つまり、枝と呼ばれたこの者を見よ、この者は 今の地位に甘んじることなく成長し、いつの日か主の神殿を建立するだろう。
Anne laid her fresh young cheek against Marilla's faded one, and reached out a hand to pat Matthew's shoulder.
普段は部屋の隅に腰かけているマシューが、マリラから容易に手が届くくらいの距離にいるので、 台所に二人ならんで腰かけて、アンの暗誦を聞いていたのだろう。
fresh/fadedは、その前のアンの木の枝の比喩に対応させたのだろう。
the gate under the poplars
ポプラの花言葉は「悲嘆」 [ジーニアス英和] 。今のマリラなら合いそうだが、マシューだとちょっと違う?
Diana dried her tears and went to a beach picnic at White Sands with some of her Carmody cousins, where she contrived to enjoy herself tolerably well;
[日記(E)1,p.83, Aug. 1, 1892] と比較。
But youth forgets speedily.

beachはbleach(漂白する, ここではアンとの辛い別れをぬぐい去ること)のことか?
This meant getting a First Class teacher's license in one year instead of two
[日記(E)1] によると、1級免許を持ったLMMは、2,3級の教師に職を脅かされていると感じていた。
What a splendid chin he has!
アンは鼻が格好良いと言われて嬉しがってるくらいだから、気が付かなかったのは意外な気がする。 それだけギルバートのことを見ていなかったということか? ちなみにアンの顎はpointed chin。
Town's too jolly after that poky old Avonlea.
本当のことかもしれないが、ジョージー自身はまだ精神的にはアヴォンリーから離れられていない。 アヴォンリーが嫌なら、シャーロットタウンの友達を作っても良さそうなものだが、 AGG(J):35章 で、試験勉強の相手はジェーン、ルビー、アンという昔のアヴォンリーの学校仲間であり、 それも勉強場所が嫌っているはずのアンの部屋、というのが妙に矛盾しているように思う。 それとも、単に勉強ができるアンを利用したということなのだろうか?
ジョージーにとって、アヴォンリーは今後もいろんな面で自分を縛るものであり、 アンが考えているような理想郷に近い場所とかけ離れた、呪われた土地なのかもしれない。 その意味で、ジョージーはキャヴェンディッシュに精神的に閉じこめられたLMMの陰画とも言える。
Town's too jolly after that poky old Avonlea.
ここのジョージーの台詞は俗語が多い。街に馴染んで世慣れたことをアピールするためだろう。
A wealthy manufacturer of New Brunswick had died and left part of his fortune to endow a large number of scholarships...
[カナダ史] によると、 1850年代までに沿海州(ニュー・ブランズウィック、ノヴァ・スコシア、PEI)、 特にハリファックスは北米海運業の中心地の一つになっており、 ニュー・ブランズウィックのセント・ジョンは造船・製材で発展した [カナダ史p.153] とのこと。 エイヴリー奨学金を設立した工場主は、造船業か製材関係で利益を上げた人のようである。
Just as soon as you attain to one ambition you see another one glittering higher up still.
AGG(J):31章 の"Hills peeped o'er hill and Alps on Alps arose."と同じ。
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osawa
更新日: 2002/12/07