メモ:28章

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28章 ある不運な百合姫

she is so fair and has such lovely long golden hair
長い髪は官能的欲望の化身の意味 [西洋シンボル事典]AIs(J)のメモ:14章 のルビーの髪も参照。
a red-haired person cannot be a lily maid.
百合は純白をイメージさせるので、赤い髪とは対局にある。 弱々しい純白の乙女が愛するランスロットの元へ死んでたどり着くのに対し、 情熱の赤の乙女が舟で流されると、死んでいられず途中で生き返ってしまう。 それに、ランスロットの元へたどり着いたとたん、 心の中とは裏腹に怒って喧嘩を始めてしまうのだから、白と赤は大きな違いである。 アンが"it's ridiculous"を繰り返すのも頷けるというもの。
Tennyson's poem
Alfred Tennyson(1809-92)は1850-92まで英国の桂冠詩人だったので、 AGG当時はその最晩年に相当するが、まだぎりぎり同時代人である。 アン達からすると、自分たちが生まれる前から既に有名だった老詩人という感じか? the Superintendent of Education(教育監督官?)がテニソンのファンだったのだろうか? 教育監督官の鶴の一声で決まるほど、当時の教育監督官に力があったということだろう。 学校で教えていたLMMの正直な感想か?
That old black shawl of your mother's will be just the thing
14章と同じで、黒いショールが活躍する。ここにも何か意味があるのか?
an old piano scarf of yellow Japanese crepe
pianoは音楽用語で弱音(soft)の意味で、softには心地よいの意味もある [リーダーズ+] 。 scarfはスコットランドの言葉で鵜(cormorant)のこと [Webster1913] で、鵜は大食と虚栄の象徴 [ジーニアス英和] 。この場合はアンの虚栄心の意味だろうか。つまりold piano scarfは、 いつものように(old)気分良く(piano)虚栄に浸って(scarf)いる、エレイン役のアンか? yellowもJapaneseも黄色を意味しているのだろう(エミリーの求めるもの(Emily's Quest), 17章に、エミリーに求婚する日本のプリンスが登場する。 ルース叔母さんの意見では、顔の黄色い異教徒とのこと)。 yellowには、cowardly(臆病な),dishonorable(不名誉な),sensational(人騒がせな)の意味 [Webster1913] がある。crepeはcreepだろうか?発音は違うが綴りは似ている。 つまりyellow Japanese crepeはyellow creepで、 これから不名誉な/人騒がせな(yellow)、ぞっとする(creep)ような目に合うこと?
A white lily was not obtainable just then, ...a tall blue iris...was all that could be desired.
[花言葉,p.14,p.134] によると、アヤメ(iris)は5-6月、ユリは6-7月が開花時期であり、1月ほどずれている。 PEIは春が来るのがかなり遅いようなので、ひと月ずらすとするとアヤメが6-7月、ユリが7-8月?
white lilyは、純潔の象徴というよりは、だれもがあこがれるマドンナであるアンだろうか。 つまり"A white lily was not obtainable just then"は、 ギルバートはマドンナ(white lily)であるアンと仲良く出来ない(obtainable just then)意味だろうか。
tallには大袈裟なの意味 [リーダーズ+] もある。それともlofty(高慢な)の意味か? blue in the faceだと怒って顔が青くなる [リーダーズ+] 意味。 つまり"tall blue iris...was all that could be desired"は、 赤い髪をからかわれたことを思い出して、 ギルバートに対して必要以上(tall)/高慢(lofty)に怒った(blue)アン(iris)が、 最大限ギルバートの望み得るもの(all that could be desired)のことだろうか。 ギルバートから見るとアンは白いアヤメに見えるらしい( AIs(J):2章 )。
wavering with long, oily shadows
shadowは夕陽長く伸びたる橋脚の影か何かで、 それが化け物か何かの影のように見え、手を差し招いているように見えたということか?
waveringはこのすぐ後で再度登場する ("But the bitterness of her old grievance promptly stiffened up her wavering determination.")。 wavering shadowsはアンの揺れる乙女心(wavering determination)に対応した、 差し招く(wavering?)背の高い(long?)そつのない/おもねるような(oily?)態度のギルバートのことだろうか? つまり、"Anne looked at the wicked green depths below her, wavering with long, oily shadows, and shivered."は、 アンは意地悪で(wicked)嫉妬深い(green)自分の心の中(depths below her)を覗き込み(looked at)、 そこに昔のギルバートとは違う、背が高く(long)大人に近づいてきたそつのない(oily) ギルバートの影(shadows)が揺らめくように(wavering)写るのを見て、 嬉しくて/怒りで(?)心が震えた(shivered)の意味だろうか。
suggest all manner of gruesome possibilities
possibilitiesはおぼれ死ぬ可能性だろう。 前文の裏の意味と対応させれば、ギルバートと仲良くなれない暗い未来の可能性でもある。 つまり、せっかくギルバートと仲良くなれそうだったのに、それをぶち壊してしまったわけで、 暗い未来の有りよう(manner of gruesome possibilities)をあれこれ思い患う(imagination)意味だろうか。
obligingly
Will you be kind enough...に対応。
I'll never ask you to be friends again, Anne Shirley. And I don't care either!
売り言葉に買い言葉なので、アンの台詞の構造の繰り返しになっている。 "I shall never be friends with you, Gilbert Blythe; and I don't want to be!"
Of course, he had insulted her terribly, but still--!
何か言ってはいけない事を言いかけて、そこで止まってしまうパターンは、例えばAIs, 5章にもある。 "So Gilbert was writing to Ruby! Very well. He had a perfect right to, of course. Only -- !!" じゃぁ、ギルバートはルビーに手紙を書いてるの!良く分かったわ。 もちろんギルバートには、誰にも邪魔されずにそうする権利があるわ。だけどそれは--!!
"Well," explained Anne
27章で、マシューが"Anne's a great hand at explaining."と言っているので、 語りで現われる時の、アンが主語のexplainは、多少皮肉があるのかもしれない。
each mistake has helped to cure me of some great shortcoming.
20章の"Of course, I've had my troubles, but one can live down troubles." 等に対応。
アンのすごいところは、失敗から学ぶ点と、同じ失敗を(ほとんど)繰り返さない点である。 失敗の中身を分析し、対策を施しているから進歩する。単なるお気楽な精神論的楽天家ではない。
towered Camelot
[Annotated AGG,p.302] では、Alfred Tennyson : "The Lady of Shalott", Pt. IV, ll.118-22 [Poetry Archives] をあげているが、"tower'd Camelot"はここだけでなく複数回使われている。 また、塔の立ち並ぶキャメロットの描写は"Idylls of the King" [Proj.Gutenberg] にも何度か登場する。 例えば
For all the sacred mount of Camelot, And all the dim rich city, roof by roof, Tower after tower, spire beyond spire,
I'm sure I hope so
アンの台詞"I feel quite sure that..."に対応。
keep a little of it, Anne, keep a little of it.
この台詞のように、マシューの喋り方の特徴は、 全く同じ/似たようなフレーズの繰り返しにある。 くどくてあまり知的な雰囲気がない反面、分かりやすく印象的である。
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osawa
更新日: 2002/12/07