メモ:26章
[和訳]
[目次]
[前章]
[次章]
26章 物語倶楽部、結成
- The Story Club Is Formed
-
LMMの本にThe Story Girlシリーズがあるし、
LMMが子供の頃、友達と3人でこういうクラブのような活動をしたことが
[日記(E)2,p.43, Jan. 22, 1911]
に書いてある。
- I just lay awake and imagined the concert over and over again.
That's one splendid thing about such affairs
- 19章の"with the exceeding sweet pleasure of talking it all over still to come."
と同じ考え方。5章にも"I lived it over in happy dreams for years."とある。
アンは(LMMに似て?)意外に昔を懐かしむタイプなのかもしれない。
アンの場合は辛い生活をしてきたので、
想像の世界で楽しまざるをえなかったことが原因なのだろうが。
- Ruby Gillis and Emma White, ..., no longer sat at the same desk
-
AIs(J):14章
で仲直りするまで、二人の関係は冷えたまま。
- they were tripping lightly down it
-
John Milton, "L'Allegro", Line 31
と比較。
[Familiar Quot. Archive]
Come and trip it as ye go,
On the light fantastic toe.
- When I woke this morning it seemed to me that everything must be different.
- アンは世界と自分の関わりを強く意識して生きているので、
このようにある日突然、不連続に年をとる/大人である宣言をするのかもしれない。
- Alice Bell is only sixteen and she is wearing hers up, but I think
that's ridiculous.
- このダイアナの感想は、現在ではかなり反論がでてくるところだろう。
年齢相応という価値観が普通だったのは、年齢と共に社会の中で要求される役割が、
今よりもっと明確だったからだろうか。
- I wrote it last Monday evening.
- ダイアナの台詞"but the one we're to hand in Monday is terrible."と合わせて考えると、
たぶん毎週月曜日は作文の時間で、アンは帰ってその日の内に書き上げてしまった。
- The Jealous Rival; or In Death Not Divided
-
In Death Not Dividedは、
[サミュエル記下,001:023]
がもとになっている。
[完全版,pp.559-560]
では直っているが、
[Annotated AGG,p.280]
のSamuel II, 2:23は誤り。
- Cordelia Montmorency and Geraldine Seymour
-
コーデリアの浅黒い肌は、アンの日に焼けた肌(2章)を思わせ、
一方、美しい黒髪はダイアナを思わせる。コーデリア・モンモランシーは、
(アンがあこがれている)ダイアナの黒髪を持ったアンなのかもしれない。
また、ジェラルディンはかつてのアン、コーデリアは現在のアンと言って良い(3章)。
アンが自作のお話(26章)の中でコーデリア・モンモランシー(今の自分)に敵役を受け持たせたのは、
世の中の隅に追いやられてきたかつての自分の反映か、少しずつ大人になりかかっている年頃なので、
世の中は必ずしも自分の思い通りにはならないというアンの認識を意味しているのだろうか。
アンの説明では、コーデリアがより男性的(regal)、ジェラルディンがより女性的(queenly)?
アンとダイアナのように、見かけも考え方も違っていたから、お互いに魅かれたのだろうか。
- velvety purple eyes
-
Alfred Tennyson, "Maud", part 1, XXII, VI
と比較。
[Annotated AGG,.280]
では"Maude"になっているが、これは誤り
[Works of Tennyson,p.301]
[Poets' Corner]
[リーダーズ+]
。
ところで、
[日記(E)1,Introduction p.xvii]
の"Maud (without an "e" if you please)"は、LMMの書簡か何かのパロディーなのだろうか?
それとも単にAnne spelled with an "e"のこと?
- That is one of the advantages of being thirteen.
- ということは、13歳になるデメリットも感じているということ?
- He saved her life when her horse ran away with her in a carriage
- 馬車の馬が暴れて暴走したのを救うというのは結構あると思う。
例えば、アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』の47章にも、
ヴィルフォール伯夫人と息子が乗っていた馬車を、
伯爵(の召使いのアリ)が救ったというのがある。
馬車が壊れてしまったということは、バートラムが馬車の馬を静めて止めたというより、
暴走した馬車に馬で乗りつけて、並走しながらジェラルディンを馬に乗り移らせて救出したのだろうか?
実は下手をすると二人とも死んでいたかもしれない?
- they would go to Europe for a wedding tour
- AGGを書いた当時はまだ結婚していなかったLMMも、
新婚旅行はヨーロッパ(英国)だった。
19世紀当時、世界に冠たる裕福な英国民は、西ヨーロッパ、地中海沿岸、
エジプトに大挙して訪れていた
[英社会史,p.461]
。またトマス・クック社(旅行会社)が、ヨーロッパの周遊旅行を企画していた。
LMMの新婚旅行の時も、この会社に世話になった
[日記(E)2,p.71, July 30, 1911]
が、同じクック社の旅行で同行することになった人達やガイドには不満たらたら
[Alpine Path,p.81,p.83,p.86]
である。
- that was a poetical retribution for her crime.
-
25章のローソンズ・ストアから帰るマシューが、"it served him right"と言っている。
他の作家に比較して(?)LMMは、罪と罰の意識が強かったか、
精神的な痛み苦しみに対して敏感だったかなのだろう。
AGGやLMMの日記には、苦しんだり拷問を受けるような目に会ったりという表現が多い。
罪と罰に関連して調べてみると...
AGGでみつかるアンの犯罪:
-
放火。
18章:地下室に放り投げた蝋燭。未遂。
-
毒殺。
16章:カラント・ワイン、
21章:薬入りレイヤー・ケーキ。
17章のストロベリー・アップルも?
-
窃盗。14章:紫水晶のブローチ。無実。
-
偽証。14章:紫水晶のブローチを紛失。
AGGでみつかる刑罰など:
-
針刺し(痛くなかったり血がでないと魔女)。
6章:ブリュエット夫人による検査(gimlet)、
11章:教会に来ていた女の子達とミス・ロジャーソンによる検査、
15章:ギルバートの「ニンジン」
(ピンでルビーの髪を留めた、piercing whisper(刺さるような囁き声)等、針のイメージが使われる)、
25章,33章のコンサートの観客の視線も?。
-
水による試練(魔女の判定法)。手足を縛って川に投げ込み、浮かべば魔女、溺れたら無罪
(地域によっては逆の場合もあった)。
28章のエレイン姫ごっこでアンが溺れずに助かったのは魔女の証明?
アンにromance(魔法)を諦めないように言ったマシューは、隠遁した魔法使い
(アヴォンリーの女性を避け、女の子達には避けられている)か?
魔法使いの外見的イメージはガリアやケルトのドルイド僧がモデルになっているらしいが、
マシューの風貌はドルイド僧に似ているかもしれない。
-
強制労働。
5章:トマス夫人、ハモンド夫人、
6章:ブリュエット夫人(執行せず)。
-
火刑。
15章:教室の前に立たされた時に怒りの焔で生きたまま焼かれて殉教。
ジャンヌ・ダルクを思わせる。
-
幽閉。
10章:リンド夫人と喧嘩、
14章:ブローチ事件。
3章末も?(泣きながら眠る)
-
重し責め。
16章:プラムケーキ(plum cake = plumb)、
19章:ジョセフィン・バリー。
-
さらし刑。
15章:黒板の前で罪状の内容とともに見せしめ、ギルバートと並んで座わらせられ見せしめ。
-
名誉はく奪刑。
2章:非常に丈の短い交ぜ織りの服(屈辱的な衣服の着用)、
11章:ピンクと黄色の花輪はフールス・キャップ、
16章:ネズミが溺れたソース、
20章:象徴的行進(ピクニックの帰り道に花輪を被って全員さらしもの)、
23章:屋根渡りを失敗して骨折(名誉を失った)、
27章:断髪、
30章:ベン・ハー没収。
名誉のはく奪は、昔から小さな社会(ここではアヴォンリー村と小学校)
では仲間外れになることを意味し、致命的だった
[拷問全書,p.269]
。
11章:教会で誰も近寄って来なかったことや、小学校でお互い口をきかないのも同じ刑罰に相当?
後者は相互破門と言えるかもしれない。
アンの赤毛もナサニエル・ホーソンの「緋文字」と同じ
[Annotated AGG,p.28]
で、アンにすれば名誉はく奪刑なのだろう。
女性の服を公衆の面前で短く切り取る刑
[拷問全書,p.279]
があったが、「この女は保護に値しない」という象徴的な意味があったので、
たいへんな屈辱だったとのこと。
そこまでではないが、2章のアンの短い服も保護の欠如(過少)を意味しているのは同じ。
-
笞打ち刑。
15章:フィリップス先生による精神的な笞打ち、
AA(J):12章
のアンソニー。
-
恐怖・緊張刑?。
20章:呪いヶ森、
32章:入試の結果、
25章:暗誦、
33章:暗誦、
36章:メダル・奨学金。
-
罰金刑。
36章:高きを望むものはそれ相応の物を支払うべきもの。
-
追放。
37章:楽園から。
ちなみに断頭台(14章)は貴族の刑罰用で、一般人は絞首刑
[拷問全書,p.212]
。四つ裂き(10,15章)はフランスでは国王殺害の大罪用
[拷問全書,p.251]
。
LMMの日記
[日記(E)1]
には他に、手かせ、足かせ、焼きごて/烙印(AGG 15,23章にも)、絞首、睡眠させない刑(不眠)、
殉教、引き延ばし責め(拷問台)、隷属(奴隷)も登場する。
- Mr. Allan says so.
- 少し前にも"Miss Stacy says so."というのがある。
アンはマリラに対して理論武装することを覚えたようである。
- I like it better when people cry.
- 25章にスローン家のお婆さんがアンの暗誦を聞いて涙を流したシーンに
"It was splendid to think I had touched somebody's heart."とある。
LMMは心が疼くような作品が好きらしい。
[日記(E)1,p.358, Sept. 4, 1909]
Browning hurts me worse than any poet I have ever read
-- and so I love him most.
...Even Wordsworth, ..., occasionally says something so vital and poignant that
I am ready to cry out with the agony of it
-- and so I love him too,...
- Jane and Ruby almost always cry
- 現実的なダイアナはあまり泣いてくれないらしい。
アンに会う前は本の虫だったダイアナは、悲しい場面に耐性があるのだろうか?
[和訳]
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[次章]
osawa
更新日:
2002/12/07