メモ:21章
[和訳]
[目次]
[前章]
[次章]
21章 味な門出
- A New Departure in Flavorings
- departureは方針などの新発展の意味
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なので、「味付けの新機軸」だろう。
英文タイトルと意味が変わってしまうが、
アラン夫人に慰められたあとでマリラに言った「明日はもっと良い日」
(Marilla, isn't it nice to think that tomorrow is a new day with
no mistakes in it yet?)を考慮し、アンの新しい出発の意味を重ねたつもり。変ですか?
[Alpine Path,pp.74-75]
に実話としてのっているが、そこでは"new fangled flavoring"という言い方をしている。
- she...had to borrow a handkerchief from her brother
- たぶん、兄のBilly Andrewsから借りたのだろう。
- Old Mr. Bentley, ..., had been pastor of Avonlea for eighteen years.
-
[日記(E)1,p.148, Nov. 17, 1895]
に、同じようにキャヴェンディッシュで18年勤めた牧師(Mr. Archibald)が登場する。
Mr. Archibaldは別の任地(Sunny Brae, N.S)へ移った。
He[Mr. Archibald] has been there[Cavendish] for eighteen years.
[日記(E)1,p.161, May 5, 1986]
で、
It seemed very strange not see Mr. Archibald there. His substitute, Mr. George, preached fairy well.
He is only here for a time.
と言っているので、Mr. Archibaldに愛着があること、代わりの牧師は短い代打に過ぎないことは、
21章の話しに状況が似ている。
- Daniel in the lions' den
-
[ダニエル書,006:016]
[松本訳,p.497]
[Annotated AGG,p.237]
。
ダニエルを陥れようとした人達は、逆にライオンに食い殺された。
人を呪わば穴二つ。
ルビーをけなしたアンに、毒入りケーキという災厄が降りかかってきたこと?
- If I had perhaps I could influence people for good.
- 別にえくぼがなかろうが、アンは周りの人に良い(?)影響を及ぼしている。と思う。
Robert Browningの"Pippa Passes"のPippaのように。
- I suppose we must have Mr. and Mrs. Allan up to tea
-
この後でteatimeが出てくるので、ここのteaは午後のお茶(afternoon tea)だろうか。
あるいはお昼を食べて、午後のお茶も出すのか?
[アンの生活事典,p.95]
によると、食事をかねたティー。
- secret as the dead
-
[Annotated AGG,p.238]
によると、普通はsecret as the graveとのこと。
[OED]
でもsecret as the grave。secret as the deadは見つからず。
dead sure(絶対に確か), Dead men tell no tales(死人に口なし)
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あたりからの発想か?
- rainbows in the water with little twigs dipped in fir balsam.
-
[Annotated AGG,p.238]
を補足すると、樹脂(balsam)が水面に薄く広がって、樹脂表面と水面の間で光が干渉し、
干渉色を生じているのだろう。
- jellied chicken
- feel like a jellyで、恐怖などで震える
[ジーニアス英和]
、chickenは子供の意味
[リーダーズ+]
。つまり、期待でドキドキ震えているアンのことだろう。
- cold tongue
- 文字通り凍りついた舌。アンが言葉もなくなる事件に見舞われることか?
- two kinds of jelly, red and yellow
- jellyたるアンの顔色が、恥ずかしさのあまり、赤くなったり黄色になったりすることだろうか?
- whipped cream and lemon pie
- whippedは笞打たれた意味だろうが、creamは、
レイヤーケーキが失敗してクリーム色のように真っ白な顔のアンか?
レモンの酸っぱさ(sour)は不機嫌を意味し、
あるいはレモン色の顔のアンを意味する?
pieでごちゃごちゃになる意味
[リーダーズ+]
がある。全体では、笞打たれたように意気消沈したアンの意味か?
- cherry pie
- cherryはサクランボの赤色の髪のアンのこと?pieは上のlemon pieと同じ意味だろうか。
- three kinds of cookies
- cookieには女性コックの意味
[リーダーズ+]
がある。マリラかアンのことだろうか。それともアラン夫人を含めた女性3人のこと?
- fruit cake
- fruitは努力の結果の意味か?cakeは?
- yellow plum preserves
- センセーショナル(yellow)な毒入りケーキの拷問(plum=plumb=重し、重し責め)が、
人々に記憶される(preserve)か?
yellowはしおれた葉っぱ(faded leaves)の色
[OED]
でもあるから、しおれた羽毛(plume)、マリラの得意な料理の場面で大失態を演じること?
10章ではマリラが得意になったアンの罰で、
"punishment upon which she, Marilla, had plumed herself"
の言い方をしている。
yellowは嫉妬の色でもある
[リーダーズ+]
。マリラが牧師に褒められたバリー夫人に対抗して料理した意味か?ゼリーも黄色。lemon pieも黄色?。
- pound cake
- poundはつき砕く、cakeは平らに固めたもの
[リーダーズ+]
で、つぶされて平たく踏み固められたアンか?
- layer cake
- layerは層状に積み重ねる意味
[リーダーズ+]
なので、poundと同じだろうか。
- biscuits
- ビスケットも平らにされた何かをさすのだろうか。
一番になる意味の表現
[リーダーズ+]
として、take the biscuit, take the cakeのどちらも可能なので、
cakeもbiscuitも似たようなものなのかもしれない。
つまり、上記のpound cake, layer cake, buiscuitsは、どれも同じ意味で、
がっかりして落ち込んだアンのこと?
cookiesもpieも全部同じかもしれない。
- ministers are dyspeptic
- dyspepticは消化不良の意味だが、気むずかしいの意味もある
[リーダーズ+]
。
牧師は地域の諸問題の調停役なので、なにかと胃が痛い思いをしていたからなのだろう。
Emily Bronte, "Wuthering Heights"(嵐が丘), chap. 1に登場する使用人のジョセフは、
不機嫌な顔をしているので、消化に神の手伝いが必要なんだろうと、語り手のロックウッド氏に思われている。
[Proj.Gutenberg]
he[Joseph] soliloquised in an undertone of peevish displeasure,
while relieving me of my horse: looking, meantime, in my face so sourly that I charitably
conjectured he must have need of divine aid to digest his dinner
彼は、私の馬から馬具をはずしてやりながら、ぶつぶつと小声で不機嫌そうに不満を呟いた。
時々、私の顔を気むずかしそうにジロジロ眺めるので、
この人は、昼食を消化するのに神の手伝いが必要なんだろうと、考えてやることにした。
アラン牧師は若くて快活なので、その見かけから判断しても消化不良ではない。
消化に関しては、この他に24章で、ステイシー先生が体操で消化を促進するというのがある。
- cakes have such a terrible habit of turning out bad just when
you especially want them to be good
-
こういう傾向は、一般に「マーフィーの法則(Murphy's Law)」と言われる。
適当な条件を設定すれば、証明可能な場合もあるらしい。
- careful to put in the flour
-
この後でアンが今度は何も忘れなかった("I'm sure I haven't forgotten anything this time")
と言っているので、ケーキに小麦粉を入れ忘れたことがあるのだろう。
- it's so easy to imagine there is
- これもアンとダイアナの噛みあわない会話の例だろうか。
ダイアナはドライアドが存在すると主張することの是非を言っているのに、
アンはドライアドを想像する技術的な容易さについて言っているのだと思う。
この後のアンの台詞"don't give up your faith in the dryad"も、
同じ前提で語られたのではないか?
- you can never be sure of getting good baking powder nowadays
-
リンド夫人の言うベーキングパウダーの混ぜ物よりもっと酷い例が
[パンチ素描集,p.112]
にある。食品、薬、毒に至るまで混ぜ物が含まれていたのが普通だったらしい(19世紀中庸の英国)。
ネズミ退治に上等のお茶、ゴキブリ退治にチョコを買いに来た女の子(p. 114, 1855年)の例なんかはすごい。
- All went merry as a marriage bell
- Lord Byron(1788-1824), "Childe Harold's Pilgrimage", Canto iii, Stanza 21
[Use of Quot. & Allusion,p.18]
[松本訳,p.515]
[Annotated AGG,p.241]
[Familiar Quot. Archive]
[Familiar Quotations]
[Poets' Corner]
。
[Annotated AGG,p.241]
にもあるように、婚礼の鐘(marriage bell)への言及は、次に弔いの鐘(knell)が響くことを言っている。
落とす前に持ち上げているわけである。
(注:
[Familiar Quot. Archive]
では"But hush! hark! a deep sound strikes like a rising knell!"をStanza 22としているが、
[Poets' Corner]
[Familiar Quotations]
で確認すると、Stanza 21が正しい。)
ところで、William Shakespeare, "Macbeth", Act ii. Scene. 1にも、
マクベスの台詞に弔いの鐘(knell)が登場する。アンのこの先を予言しているようで面白い。
ダンカン王がこれからマクベスに殺される直前の場面である。
[Familiar Quot. Archive]
The bell invites me.
Hear it not, Duncan; for it is a knell
That summons thee to heaven or to hell.
あの鐘の音は私を誘惑している。
あの鐘を聞いてはならぬ、ダンカン王よ。なぜなら、あれは弔いの鐘、
天国へ、あるいは地獄へと、汝を迎える鐘なのだから。
- Baking powder
- bakingで焼けつくような、powderはgunpowder(火薬)の意味
[リーダーズ+]
か。ケーキに焼けつくような爆発物が仕掛けられていて、大失態を演じる意味?
- a small bottle partially filled with a brown liquid and labeled yellowly, "Best Vanilla."
-
yellowは、新聞用語で無謀な(reckless)とか破廉恥な程センセーショナル
(unscrupulously sensational)の意味
[OED]
(初出, 1898 Daily News)。LMMは新聞社に勤めていたことがあるので、
こういう意味も良く知っていたと思う。
ケーキの味付けはVanillaならぬvanity(虚栄心)?
bestはworstと同じ意味だろうから、アンが無謀にもケーキを作って『最悪の虚栄心』が打ち砕かれたことか、
『最悪の虚栄心』の結果が村全体に広まる意味だろうか。
中身の怪しい瓶で災いがふりかかってくるのは、キャロルの「不思議な国のアリス」
[Alice's Adventures]
を意識したのだろうか?
- you've flavored that cake with ANODYNE LINIMENT.
-
[Annotated AGG,p.242]
では、BidefordのMrs. Esteyが薬入りケーキを作った本人の根拠として、
[Alpine Path,pp.74-75]
とFrancis W. P. Bolgerの"The Year Before 'Anne'", p.245, (1991)を挙げている。
[日記(E)1,p.116, July 31, 1894]
の注
[日記(E)1,p.403]
にMrs. Esteyの薬入りケーキの記述がある。
[Alpine Path]
では牧師館の女主人としか書かれていないので、
人物を特定したのはBolger(1991)より「日記」(1985)の方が早いかもしれない。
- a light step sounded on the stairs
- light stepはアラン夫人の若さを表すが、
briskに歩くマリラは、ズシッと重めのステップなんだろうか。
いずれにしても木製の階段は歩くと響くらしい。ドアの音も響くし、部屋で泣いてるのも聞こえる。
- I'll wash them when the minister and his wife are gone
- ケーキ事件がなかったら、牧師さん達の相手はマリラがして、
アンはお皿を洗っていたのだろうか?
- It's meant to be taken internally
- linimentは塗り薬
[リーダーズ+]
なので、たぶん飲み薬ではないだろう。
最後には体の内部に取り込まれる意味だと思う。
- it was really providential that Mrs. Allan was a kindred spirit.
-
先のアンの台詞、
"I suppose I shall just have to trust to Providence
and be careful to put in the flour."
に対応している。
- I never make the same mistake twice.
-
アンは、14章冒頭でも同じようなことを言っている。
"I never do the same naughty thing twice."
[和訳]
[目次]
[前章]
[次章]
osawa
更新日:
2002/12/07