手紙を出しにヘロデゲートの外の郵便局まで行く。 よく「手紙を出すぐらいの時間も無いのか」と言う人もいるが、 実際は海外で手紙を出すのは(超一流のホテルでチップさえ渡せば何でもやってくれるような所は別として)非常に手間である。窓口で聞いたら、 日本まで2.30シェケルとの事。安いと言える。
Al Hashim に戻る。 KLM の出発時間が変更になっていないかどうかを確認しなければならない。 しかし受付で「電話をかけさせてくれ」と言ったら、 3階でかけろとの事。3階にある公衆電話はカード式で、 1回か2回しかかけない旅行者が使うのは無駄が多過ぎる、 少し払うからかけさせてくれといっても、カードを買えとの事。 コインでかけられる所はないかと聞き、 結局、行きつけのインターネットカフェに行く。 ここで KLM に電話したら、テープのメッセージしか出ない。 なんじゃ、これは? と思っているうちにコインが尽きた。 番号を再確認して、またかける。 結局、テープは英語とヘブライ語で、 「リコンファームの必要はありません。フライト時間の変更はありません」 と言っているようだ。イマイチ確証が無いが、どうせ19日の早朝のフライトで、 18日の夜中には飛行場に行く訳だから、 時間が変更になったって乗り遅れやしないので、気にしない事にする。
当地では、朝一番の客にサービスすると、 その日は繁盛すると信じられている。 まあ、確かに日本でも開店セールというのは良くある事だがさて、トンネルに入る。 あれ?・・・水路の脇を通るのかと思ったが・・・目の前は小川のようになっている。 足がちょっと濡れるかな、まあいいやと思って一歩踏み出した所で「ヒエェ〜!」と叫びそうになる。腰近くの深さまで冷たい水が流れていて、 かなり本格的な洞窟探検である。観光気分は吹き飛んだ。 やっと一人が通れるぐらいの狭い岩の割れ目の中を水は流れている。 腰のカメラが濡れないかと心配である。 目が悪いので、足元も天井(所々に低い箇所あり)も良く見えないので、 ロウソクを上に下に振りながら、転倒しないように注意して歩く。 ロウソクが無ければ完全な暗闇だ。 時おり風が吹いてきて、火が消えそうになるので、 ガイドブックで風を遮る。 歩いているうちに、アメリカ人とおぼしき男女4名程が、 準備良く懐中電灯持参でやってくる。 ロウソクに比べると懐中電灯は、文明の利器というか、ちゃんと足元が照らせるらしく、 ほとんど勘と手探り状態の私よりペースが早い。 「ハロー」と声を掛け、先に行ってもらう。 ロウソクしか持っていない私を見て、「あなた、勇気があるわね」と言われる。 それにしても、よくヒゼキヤの時代にこんなすごい地下水路を掘った物だと関心する。 ようやく光が見えた時には、 正直言ってほっとした。 太陽がまぶしい。 出口の階段に座って靴を脱ぎ、ひっくりかえして水を出す。 靴下を絞って階段の手摺に干して、足をブラブラさせる。 もっとも、この程度ではびしょ濡れになった靴は乾かないが。 それで、どこかで安いサンダルでも売っていたら買って履き代えようと考えた。
外に出て、当分見る事も無いであろう Western Wall を見て、 そしてシオンゲートの近くの、値段が付いている土産物屋に行く。 キョロキョロ見ていたら、店主に声をかけられた。 サンダルは無いかと聞くと、 スーク(市場。ここでは Souq Khan az-Zeit 通り、つまり Al-Hashin の前の通り)へ行けとの事。 土産に羊の縫いぐるみを20シェケルで買う。 もっとも今日は Mahane Yehuda の市場で土産を買う予定なのだ。 アラブ経営の店では、値段の交渉をしないといけないが、 イスラエル経営の店では値段が付いていて、 相場を知らない旅行者には便利だと思ったのである。 しかし、何らかの事情で土産を買い損ねるとまずいので、 保険のつもりで羊を一匹買っておいた訳である。 しかしこの時点では、結局これが唯一のイスラエル土産になるとは知る由も無かった。
なお、イスラエル博物館の Web は、 ボランティアの手によって非常に内容が充実したと聞く。 英文の解説になるが、こちらを御覧あれ。 <http://www.imj.org.il/>
オプション1:インターネットカフェに行って東京のセゾンカウンターの緊急連絡用コレクトコールの番号を調べるか否か。
→ インターネットカフェを使うのに5シェケルかかり、バス代が無くなってしまう。
それに、もしカードが使用停止になっていれば、「もう連絡しても事態は改善されるわけではない」ので、後でかけても変わらないだろう。
それに、どうせ銀行が開くのは明日だ。
でも、電話しないというのは悪用された場合の事を考えると気になるが。
オプション2:中央バスステーションまで、市内バスを使うか否か。
→ 3.70 シェケルかかる。
使えるお金が幾らあるかを考える。
アムステルダムで少し滞在するし、
帰国したら外貨を両替して日本円を手に入れ、
成田から上野まで京成が1000円。
JRの切符代も必要なので、
為替レートがどうなっているのか判らないが、
$14しか無い以上、「シェケルに替えられるようなお金は無い」と思った。
一応、宿の受け付けで「中央バスステーションからベングリオン空港まで幾らだと思う?」と聞いてみた。20シェケルという答が帰ってくる。
やはり、その位であろう。
現在、20シェケルなら、ギリギリあるな。
だったら、旧市街から中央バスステーションまで歩けばなんとかなる。
そこでロビーで荷物を広げ、長距離歩行に向く様にパッキングをしなおす。
7時を過ぎているが、幸いまだ外は明るい。
(手を叩いて喜ぶ程ではないが、暗い道を歩くのに比べればマシというか)
ダマスカスゲートから Jaffa Road に向かって歩いていると、
「こいつ、旅行者だな」と見て悟ったパレスチナのガキが2人、ヨオ! とばかりにふざけて肩をたたく。
手が汚れていて、シャツの触られた部分が汚れた。まったく!
相手にせずに歩いていたら、今度は3人のイスラエルのガキが、
1.5 リットル程あるオレンジジュースのボトルを手に、
「ホレ!」といった感じで、ひっかける仕草をした。
「冗談じゃない、オレンジジュースなんか、かけられてたまるか」と反射的に後ずさりしたら、「ジャパニーズ?」と言って、3人で笑っている。
まったく頭に来る。パレスチナの不良とイスラエルの不良では、
どっちがマシだろうか?と考える。
Jaffa Road に来た。
何となく、帰りは歩きかもしれないと思って来る時にバスから見た道を覚えていたのも助けになった。
そこで私は昔から使っている旅の相棒を、歩きながらサブザックのポケットから取り出した。
あまり街中でオリエンテーリングコンパスを使う人間は居ないし、
最近は磁界を発生する物が多いので方角が狂ったりする事もあるが・・・
それでも、頼りにできるのはこれしかない。
コンパスを地図の上に置き、進む方向に合わせ、ダイヤルを回して北にセットする。
距離もコンパスの目盛りで測る。
約2.4km といった所か。
セカセカ歩く私の場合、時速6km程なので、
そうであれば20分と少しで目的地に到着する計算になるが、
今は荷物を持っているし今日は散々歩いて疲れている。
それに、この暑さ。時速4kmペースだと、30分以上かかるか・・・
ふ〜む・・・予想到達時間を32分と見積り、
腕時計のモードをストップウォッチにして歩行時間を計測する。
ストップウォッチの使い方は、32分歩いて目的地に達していなかったら、
歩き続けないで、正しい道を歩いているかどうかチェックした方がいい、
という判断材料にする。
オリエンテーリングコンパスよ、私を助けてくれ!
歩きながら見る Jaffa 通りは、まんざらわるくもないが、
今の世は、金が無ければどうにもならない事を思い知りながら歩いているので、
ながめを楽しむような精神的余裕は無い。だいたい、ここは車が多い。
という訳で、海外を1人で旅行する際には、 ポケットに予備の100ドル札、または万札を1枚入れ、(汗で濡れないようにビニールに入れ、かつ、スリが盗み難くするためにビニール袋を安全ピンでポケットの内側に留める事)かつその予備のお金には手をつけないのが肝心である。中央バスステーションには28分で到着した。 そこで再度、Leumi Bank に行く。 ダン、ダン、ダン! とガラス戸を叩く。 中から人がけげんそうに見ている。 ジタバタして、来てくれとポーズを取る。開けてくれた。ラッキー! と思いきや、 掃除の人間なので、判らないとの事。 明日、7時に来てくれとの事で、ありがとうと言って去る。 さて、ベングリオン空港行きのバス停は道のどこにあるのだろうと探し回ったが無い。 そこで、バスステーションのインフォメーションで聞くと、 プラットフォーム No.8 から出るとの事。 長距離バスと同じ所から発車するのか。 (来た時には道端のバス停で降車したのだが、それは大抵の乗客は市内バスに乗り継ぐから、という理由のようだ) 値段を聞く。18.20シェケル。払えた。 さて、これで2シェケル余ったな。旧市街だったら、値切れば焼きとうもろこしか、 または売れ残って冷めかけた紅茶を値切れば、ありつける所だが・・・今からではいかんともしがたい。
空港前で降りる。入口に入る前にすかさず「流しの警備員」に呼び止められる。 が、旅行の目的や、パスポートと航空券を見せたらすんなり通してくれた。
インフォメーションでチェックインのカウンターはどこかを聞いた。
そしてチェックインカウンターの前をウロついていたら、
さっそく女性の係員に呼び止められ、「ここで待て」と命令された。
それはいいとして、私を待たせたまま他の2人の客のチェックをやり出して、
私は放ったらかしである。
しかし「遅い!」と言ってその場を立ち去ると後が非常に面倒な事になりそうなので、
辛抱強く待つ。
彼女は航空券を見ると、「5:30 に出るのだから、2時に来なさい」との事。
ええ? 今日はダメなのかと聞くと、ダメらしい。
インフォメーションで聞いても、やはりダメとの事で、
「早朝フライトなら前日にチェックインできます」というのは、
イスラエル政府観光局の誇大広告に過ぎなかったようだ。
それとも、特別料金を払ったりすれば出来るのであろうか。
ノドが乾いた。野性動物のように水を探して空港中をさまよう。
なにせ、水が買える身分ではない。
結局、 ARRIVAL ゲートのトイレ近くにウォータークーラーがあった。
水をガブ飲みする。はあ、水が飲めるというのは嬉しい。
水を飲んでいれば、しばらくは食べなくても人間は死なないから。
そういえば水呑み百姓という言葉があるが、私はさしずめ水呑み旅行者かな。
時間があるので旅行日記を書いていると(今日の分の旅行記が詳しいのはそのためである)、隣の女性が挨拶をしてきた。
話をしていたら、彼女は南アフリカ出身で、是非南アフリカに来なさいと勧められた。
犯罪が多いので行きたくないと言う(普通は社交辞令を使って、いいですね、などと言う物だが)と、犯罪はどこにでもあると力説する。
彼女は言った。レソトを知っているか、と。
知っていると言うと、「ここは殺人がとても多い所だが、」それを聞いて私は椅子からずっこけそうになったが「今は殺人が減ったので、是非来なさい。今、ここでの問題は、失業と、住む所が無い事で、犯罪は低下しました」との事。う〜む・・・そんな国に来いと言うか?
そうこうしているうちに、ガイドブックが無い事に気がついた。
インフォメーションに行ったら、あった。
(私は忘れ物は多い方である)
「セキュリティーを早く受けたい人は、Bゾーンで受けられます」とアナウンスがあった。そこでさっさとそちらに行って並ぶ。
そこでも私は荷物があまりに少ないので、また不審がられる。
「服は無いのか?!」と言われ、ありますよと言って、
レジ袋の中のTシャツを見せると警備員は呆れた様子だったが、
予想よりあっけなくセキュリティーチェックは終った。
フライト時間に比べるとあまりに早くセキュリティーチェックを終えた私は、 誰も居ないKLMのチェックインカウンターの前で待つ羽目になった。 結局、73番カウンターはビジネスクラスの客用なので、 格安航空券の私は76番に移動。
日付が6月19日に変わった。
Last modified Date: 2002-01-06 00:54:37+09