バス停から15番のバスでドルフィン・リーフに行く。 「イルカとシュノーケリングのプログラムは8:30に始まります。 参加者は遅れずに8:15までにダイビングセンターで受付を済ませてください。 あまりに遅れると、既にお支払い戴いた費用の払い戻しは出来ません」 とあるので、 早めに行ったのだが、 バス停が判らなくてバスターミナルのまわりをウロウロして時間が過ぎてしまったが、 結局、ここは長距離バスと同じターミナルから出ると判った頃には、 ギリギリの時間になってしまった。
バスターミナルから出るのは長距離バス、市内バスは、 目抜き通りから出るはずだという思い込みが時間ロスにつながった。 エイラートは規模もそれほど大きくない街なので、 エルサレムとは違ううまくやっていれば、7:30発のバスに乗れたのにとおもうと、 ちょっと残念。 間に合うのかと気が気ではない。 距離的には、バスターミナルから5km程なのだが、 途中であちこち寄り道をして、 地元の客を乗降させるので時間がかかる。 「早く進めえ!」と心の中で叫びながら、 時計を見てオロオロしている。 バスから見る紅海の景色は・・・全然感動するような所は無い。 浜辺という浜辺は、誰かしらの所有物になっていて、 勝手に泳ぐこともできない。 (勝手に砂浜で泳ごうとすると、 過去の中東戦争の時の地雷がまだ埋まっているので危険というのもあるのだが) 所狭しと建物が並んでいる。砂浜は規模が小さい。 飛行場も近くにあるし、強いて言えば、水がきれいな東京湾の景色である。
運転手が「ドルフィン・リーフだ」と教えてくれて、 パッと降りて、入口に向かう。 8:18だ。まあ、滑り込みセーフと言った所だろう。 他の客も、やっと来たといった所。
結局、少しサバを読んでいるようだ。 結局、遅れたどころか、待たされた。
インストラクターはテキパキとサイズの合うウエットスーツを参加者に着せ、 シュノーケルを着けさせ、フィンも選ぶ。 ウエットスーツなんか着たのは初めてである。 「シュノーケリングの経験の無い人はいますか」と聞かれ、 私は、ちゃんと習った事は無いので、初心者だろうと思い手を上げた。 そして、一緒に手を上げた、 小柄で黒いショトーヘアーのベルギーのお母さん(子供と父親は応援に回っている)と一緒のグループになった。 「ビデオは撮りますか」と言われ、「10分45シェケル」と言ったように思ったので、 45シェケルなら、まあ、記念にもなるしと思って頼んだ。 「NTSC で撮れますか」と聞く。OKとの事。 ベルギー女性もビデオを希望したが、 彼女は NTSC とか PAL 方式の区別はつかなかった。 そこで、インストラクターが、あなたはどこに住んでいますかと聞いた。 これは、判りやすくて的確な方法だと思った。 イルカに接する時の注意事項を中心に説明を受けてから海に歩いていく。 砂浜が熱くて足の裏が焼けそうだ。
水の中でインストラクターが、 曇り止めにゴーグルの内側にツバを吐いて海水ですすぐ所を実演する。
個人的には、曇り止めなら、 コンブのヌルヌルをゴーグルの内側に塗る方が気に入っているのだが、 海水温が高いせいか、この辺の海にはコンブは漂っていないベルギー女性は、水の中で「ア〜〜!」と騒いでいるが、 インストラクターは、「沈む事なんかないわ」となだめる。 そう。スーツを着ているので、 潜ることができないのだ。つまんないの。 私は潜るのが好きだから、 むしろウエイトベルトが欲しいぐらいである。 という訳で、これはスキンダイビングではなく、 シュノーケリングである。
イルカが来た。 インストラクターがイルカと遊んでいる。 「あなた達もやりなさい」と手招きする。 私は夢中になってイルカと泳ぎ、イルカに触れて、楽しんだ。
自分ばかりイルカと遊んでも悪いので、 時々ベルギー女性にも譲ったのだが、 泳力の問題もあって、 彼女のチャンスは少なかった。インストラクターがバタ足で進むようにと教えてくれたのを無視して、 私はもっぱらドルフィンキックで進む。 両手は胸に当てるようにという教えも無視し、 手で舵を取る。 こうして、イルカが斜めに傾いて泳ぐと、 私も合わせて斜めに泳ぐ。
大抵の人は傾いて泳ぐ事はしないと思う。 シュノーケルに水が入るから。「イルカの目(に触れて傷つけないように)に気を付けなさい」とインストラクターが言う。 ところが、終わりのほうになって何だか少し気分が悪くなってきた。 シュノーケリングの時間(30分程)も終わり、 海から上がる途中で猛烈に気分が悪くなり、吐きそうになった。 多分、顔色が真っ青だったのだろう;インストラクターは、 私に気分が悪いのかと聞く。 "I feel like I got a motion sickness" と答える。 するとインストラクターは、 陸上とは重量のバランス感覚が違うので、気分が悪くなる人もいる。 吐いてもいいよ、そうしたら気分が良くなるから、との事。 良くしたもので、今朝は急いでいたので、 砂糖入りの紅茶2杯しか飲んでいないので、 吐く物が胃の中に無かった。 それで「ああ、儲けたな」と思った。 「どうせ、朝食を食べていても、身には付かなかっただろうから」
気分の最悪期を脱し、 ウエットスーツを脱いで (うまく脱げないので、小さい子供のように、脱ぐのを手伝ってもらった) 器具を返して、解散。
まだ泳ぐ気分になれないので、 いったんシャワーを浴びて、 イルカの訓練風景を見る。 それも終わったので、 遊泳区域で泳いでみた。 水はきれいだが、珊瑚はほとんど無い。魚が少し居る。 これでは、西伊豆の水中より寂しい光景である。 やはり、シナイ半島のダハブのブルーホールと比べると、 寂しい限りである。
さて、ビデオの編集ができたので受け取りに行く。 値段を聞いて、ドルで払いたいと言うと、$38だというのでびっくりして聞き返す。 結局、私が45シェケルだと思ったのは、145シェケルの聞き損ないだった。 さらに、ここの中はドル払いだとレートが悪く、 1ドルで3.8シェケルだと説明され、電卓を見せられた。 ショックである。だいたい、今まで節約して、 100ドルで3日は持たせてきたのに、 一気に$38の大散財。 しかし、自分で頼んでおいて、 ビデオも出来上がってしまっているので、 今さら「要らない」とも言えず、すごすごと$38払う。
それで、少しでも入場料のモトを取るべく、 映画を見る。 イルカと海洋環境に関するテーマであったが、 「ここは涼しい」というのが取り柄だった。
みやげ物屋で絵葉書を買う。 どうも、イスラエルでは、 「郵便物として出すには大きすぎるのではないか」 と思える絵葉書がある。 そこで店主に聞いたが、「切手を貼って出せばいい」との事。う〜む、、、
狭い遊泳区域でまた泳ぐ気にもならないし、 砂浜で日焼けなど、 する気にもならないので、 ここはもう用済みだとばかりに施設を出る。 バス停はドルフィン・リーフのすぐ前にある。 バスがいつ来るのか良く判らなかったが、 地元の母娘連れもバスを待っているので、 「何時かは来るだろう」と思って待つ。 結局エイラートのバスターミナルには昼頃に戻った。
まだエルサレム行きのバスの出発までは時間がある。 イエメン料理のチェーン店があったが、 所持金が乏しいので金策を考える。 バスターミナルの近くに銀行があった。 なにせ、T/C もあと $100 しか無いので、 可能ならカードで現金を下ろす方がいいだろう。 中に入ると、ATMは例によって説明も画面表示も全部ヘブライ語。 悩んだが、試しに日本で発行されたカードを差し込んだら、 表示が英語に変わった。 とりあえず、当面必要な200シェケル分、 下ろすことにする。 それにしても、 クレジットカードで手軽に現地通貨で前借り出来るとは便利になった物である。
暑い日差しの中、エイラートの街をブラつく。 暑さで食欲が減退しているので、 それほど空腹は感じないので、 サンドウィッチでも買って軽く済ませるか、と思った。
ロシアの小さなコンビニにサブザックを背負って入った時は 入口横にある棚に置いてからゲートをくぐる様に言われた。最近でこそ鎮静化しているものの、 人の多いショッピングセンターで、 多数の犠牲者が出る事を狙ったテロが続いた事があった。 だから、万引きより、テロを警戒しているのである。 エイラートの街は、のどかなリゾート地という雰囲気なんだが、 現地の人は警戒を緩めていないのだ。 複雑な気持ちで中に入る。
もっとも、どちらかと言えば、 「ウチの店に爆弾持ってくればその場で捕まるぞ」と威嚇する事で、 バカな事を考えるテロリストから店を守ろうとしているように思える。 というのは、「屈強なガードマン」というよりは、 定年を過ぎたオジさん、といった風だったから。 経費と安全のバランスを取っているようだ。中は、規模こそ大きくはないものの、品揃えは豊富で、 現地人向きの値頃な物が多い。 こちらの生活事情が良く分かり、見ていて楽しい。鳥肉などは、とても安い。 ここではパン2斤 2.75シェケル、石鹸 2.75シェケル、手ぬぐい 4.75シェケル、 ジュース 8シェケルを買った。
ミネラルウォーターより果物ジュースの方が安いしビタミン補給になるSpring Hostel には自炊施設もあるので、 ここで食料品を買い込んで自炊すれば、 10日居ても$100もかからないだろう。 もっとのんびり旅行したいよぉ、、、 なのに、昨日来て、今日の午後一でエルサレムにトンボ返りだなんて、、 「休みの取れない日本人」の悲哀を味わうのであった。(;_;)
さて、2時近くになったので、 バスターミナルのエルサレム行きの乗り場を再確認する。 しかし、2時になってもバスが来ない。 おかしいなと思いつつ、しばらく待ったが、 これは変だと思って待合室で旅行者に聞くと、 「エルサレム行きのバスは1時に出たと皆が言っている」との事。 2時のはずだと思って案内所に行く。 独特の風貌のオッサンで、どこの国の人なのか良く判らないが (イスラエル人には違い無いのかもしれないが) 英語が全く通じない。 何だか、「テルアビブ行きに乗れ」と言っているようだ。
英語が通じないのが珍しいぐらいだから、 イスラエルは英語が良く通じる。 もっとも、ピンチの時に限ってその珍しいのに当たらなくてもいいのにと思う。そんな事を言われても、エルサレムに行きたいのだが、と言って、 その男に、切符と、コンピュータで発行された予約票を見せた。 すると男は予約票から切符を外し、 テルアビブ行きの予約票を発行し、ホチキスで切符をとめてよこした。 あっけに取られていると、 後ろに居たサングラスを頭にかけ自動小銃を担いだ背が高くて若い兵隊が通訳してくれた。 「エルサレム行きのバスは、今日はもう無い。3時にテルアビブ行きが出る」
注:翌日は安息日なので、イスラエルではバスは1日中、全く走らないエイラートからはエルサレム行きもテルアビブ行きも値段は同じなのか、 さすがに「金を払え」とは言われなかったが、 困るんだよね。テルアビブからエルサレムまで行くのに1時間ぐらいかかるし。 それにしても、私はこのバスターミナルには、1時間以上前には来ていたのに。 もし、バスに乗れていたら、夕方の6時にはもう宿でくつろいでいる頃だろう。 しかし、中にはもっと悲惨な人もいて、 2時発のエルサレム行きの切符を今日、 ここのバスターミナルで買ったという旅行者もいた。 イスラエルは西側並に時刻も正確かと思っていたが、 ここでは「アラブ時間」でバスが運行しているらしい。
考えられる理由として、 「今日はバスの運転手が1時間早く仕事を切り上げて 帰宅したかったから」というのがあるが、 実際の所は不明。3時。バスが来た。指定席なんて、初めてだ。 もっとも、予約しなければ乗れない程には満席ではなかったが。 隣の乗客は韓国の女の子で、 何でもキブツで働いていたが、 一旦韓国に戻って親戚のレストランを手伝って、 またイスラエルに戻るとの事。 「それはいい経験だろうけど」と私は聞いた。 「でも、キブツのボランティアって、 食事は与えられるけど、 給料は出ないんでしょ? だったら、韓国で働いたほうがお金にならない?」 すると、お金に関してはその通りとの事。
バスの中で必死にガイドブックを読む。
元々テルアビブに来る気は全く無かったので、
ガイドブックのテルアビブの部分は目を通してもいなかった。
どうしようか。この機会に、テルアビブに一泊するか?
いい泊まり場所があるか?
結局、ガイドブックを見た結果、テルアビブには見るべき物は無い。
しかも、安息日では博物館も店もやっていない。
バスも動いていない。
これで決まった。今日中にエルサレムへ行くべし。
砂漠に沈む夕日は、きれいだったが、私の心も沈んでいるので、何とも言えない。 ベエル・シェバのバスターミナルに来たが、もう暗くなっている。 もう、バスも乗り飽きた。
やっとテルアビブに着いた。もう8時だ。 バスを降りる際に彼女は、シェルートはここの通りから出ると教えてくれた。 という事は、彼女はテルアビブを良く知っている。 よって彼女は "旅行者" ではない。
エルサレムに行き損なった旅行者が7人揃った。
みんなでシェルートに乗る。
20シェケルだ。
エルサレムまで、しかも安息日の夜なので割増し料金を請求されかねない所を、
路線バスとほぼ同額というのは悪い値段ではないが、
エイラートからここまで5時間乗って61シェケルだし、
エイラートの宿代が25シェケルだった事や、
そもそも、本来なら払う必要の無い費用である。
運転手に「旧市街に行かない?」と聞いた、
すると代わりにアラブ女性が「バスターミナルまでしか行かない」と答えた。
行きっぱぐれた旅行者の1人(彼は中東諸国を旅行するようだ。
ヨルダンからイスラエルに入国してまだ間もない)と相談する。
みんな旧市街に行くから、タクシーに乗るより安い値段をみんなで出し合えば、
「交渉成立」となるだろう、と思った。
バスターミナルに着いた所で、彼が交渉を買って出た。
「5シェケル」と彼は運転手に言った。
運転手は「各人、5シェケルだ」と言った。
(というか、私にはそう聞こえた)
とにかくこれで Jaffa Gate まで引き続き行くことになった。
(Damascus Gate の方が私は宿に近くて便利なのだが)
「結局、幾らなのかい?」と私が彼に聞く。
「いいよ、私が払っておくから」
Jaffa Gate に着いた。彼は運転手に5シェケル払おうとした。
運転手は、「みんなで5シェケルじゃない。1人5シェケルだ。
5シェケルなんか、無価値だ」と言って、結局みんなで5シェケル払った。
車から降りて彼は済まなそうにみんなに言った。
「5シェケルだって言っていたのに。失敗した」と。
う〜ん、、、バスで来ても5シェケルぐらいかかるけどな・・・
それに、安い食堂でも、紅茶一杯で6シェケルだ。
値切るにしても、みんなで20シェケルあたりが限度だろう。
7人の旅人は、各人が心に決めた宿に向かう。 4人は TABASCO ホステルに向かうようだ。 ここは私が以前泊まった Al Hashim に近い。 みんな旧市街は初めてだというので、私が道案内を申し出るが、 「多分、行けると思う」と私が言ったので、 「何で*多分*なの?」と突っ込みを入れられてしまった。 「旧市街は迷路だから、でしょ?」と、別の旅行者が代わりに答えてくれた。 さて、何度も迷って、散々ウロついて、 幾らなんでも覚えただろうと思っていた Jaffa Gate から Al Hashim に行く道であるが、 暗くて店が閉まっていてどうも勝手が違ったので、 見事に目印の公衆トイレが見つからないという事態になり、 その辺の人に聞いてやっとたどり着く。 私は思った。 Al Hashim は居心地はいいが、 人気ホステルだから、どうせ安い相部屋は一杯だろう。 だったら、 TABASCO も悪くはないかな。 3人の韓国人旅行者が泊まっていた所だし、なにせ、安いから。
TABASCO に着いた。耳をつんざく音楽が地下から流れてくる。 "I don't like this atmosphere" と私は言った。 「確かに、うるさ過ぎるね」と5シェケルの彼は言った。 そこで彼らと別れた。
ところが、 Al Hashim に行くと、何と $5 の相部屋が今日は空いていると言う。 若いマネージャーが「君は確か、$25の部屋に泊まっていたよね。 シングルも空いているんだ。$40なんだが、朝食も付けるから」と言った。 そんな事言われても、だって、 $5 で泊まれるだと思うと、 誰が$40の部屋に2泊もするかと思う。 それに今は米ドルの T/C しか無いというと、 それは全然問題無いとの事。 マネージャーは考え込み、$30の部屋の鍵を渡して、 部屋を見てみないかと言う。 部屋は、値段を考えると申し分無いし、 やっぱり、贅沢だけど、シングルは気が楽でいいや。 それに、明日は早朝のバスツアーに行きたいし、と思ってここにする。 それで、バスツアーの代金と合わせて$100の T/C で払う。 それにしても、こんなホステルの受付で、 手数料無しで T/C で払えて、釣り銭はシェケルでくれるというのも凄い。 35シェケルも手数料を取る Bank leumi より ずっとマシだ。
さて、疲れていたし、明日は早いので、もう洗濯するのはよそうかと思った。 洗ってある下着は1組みあるので、明日それを着れば、 後は飛行機に乗るだけだから、 洗う必要は無いという計算になるが、 なんとなく習慣になってしまったらしく、 シャワー室に粉石鹸と下着を持って行き、洗って干した。
もう10時だ。予定していた時刻より3時間遅れたが、 とにかく、予定していた通りの日にエルサレムに戻った。 明日は朝3時のバスツアーに出発だ。
Last modified Date: 2000-09-03 22:10:22+09