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朝が来た。ここのユースの95シェケルには朝食も含まれている。 過去の経験から、遅くに行くと食べ物が充分に無いかもしれないと思い、 さっさと食堂に行き、食べ放題の朝食を、元を取るべく腹に詰め込む。
こういう人間が大勢いると、後から来た宿泊客は食事が無い場合があるわけである。
イスラエルは野菜がうまい。 紅茶は好きに飲めるが、安い葉を使っているらしく、まずい。 コーヒーゼリーはベチョベチョで甘ったるく、私の好みに合わない。 もちろん残したりはせずに全部食べる。

下着はあまり乾いていなかった。外に干せば乾いたかもしれないが、 ユースに着いたのが10時前だったので仕方無い。 生乾きの下着を、他の替え下着とは分けてレジ袋に入れる。

さあ、出発だ。ベエル・シェバは、見所がない。 あえて行くとすれば、ベドウィン・マーケットと、 アブラハムの井戸なんだが、 はっきり言って、ベドウィンなんかヨルダンに行けば幾らでも居る。 というか、ヨルダン人の8割はベドウィンの部族である。 ベドウィンのどこが珍しいのか良く判らないが、 一応、木曜の朝のベドウィン・マーケットは見所という事になっている。 そして今日は木曜だし、ここはベエル・シェバだし、とあれば、 ミツペラモン に行く前にひと眺めしておく事にする。

念のため、ユースの受付でアブラハムの井戸への行き方を聞く。 ユースを出て右に曲がり、まっすぐ歩けば10分との事。 受付の壁に貼ってあった地図も確認して出発する。

しかし、歩けど歩けどアブラハムの井戸など無かった。 それに、例によって(ベツレヘムの再来のごとく)道路の名前が大幅に変わっていて、 ガイドブックの地図に記載された通りの名前と全然違う。 目印にと思っていた郵便局も無い。 暑い中、テクテクテクテク歩いて、いい加減嫌になって、 「もう、アブラハムの井戸なんか見るのやめた!」と思ったが、 バス停に人が5〜6煮んいたので、 「アブラハムの井戸はどちらですか」と聞くと、 やはり全然通り過ぎてしまているらしく、 このバスに乗った方がいいとの事。 運転手に「アブラハムの井戸」と言って乗った。 いつ着くんだろうと思ったら、なぜか終点のバスターミナルに。 運転手は「アブラハムの井戸の7番のバスに乗れ。ほら、あそこに停まっている」と教えてくれた。

イスラエルでは英語の出来ない人には滅多に会わないが、 年輩の人だとたまにいる。 7番のバスに、渡りに船とばかりに乗ったはいいが、 運転手に「アブラハムの井戸」と言ってもまるで通じず、 無視されてしまう。 ダメだ、こりゃと思ってバスを降りる。 しばらく待っていると、次の7番のバスが来た。 私は尋ねた。「アブラハムの井戸は?」 ところが、良くした物で、この運転手も英語が通じない。あきらめて歩く事にする。

さて、昨夜は散々だったベエル・シェバの街も、 昼間だと位置がちゃんと判り、 アブラハムの井戸も(今までの迷走ぶりを考えれば)比較的スムーズに行けた。 アブラハムの井戸は・・・人の感じるところは様々であるが、 「素晴らしかった」とは言えない。 行く事を勧めるかと聞かれれば、「お勧めしない」となりますね。

ベドウィン・マーケットは、単にベドウィンが駐車場に店を広げているだけで、 つまらなかった。 もっとも、朝6時ぐらいがベストとの情報もあり、10時頃に行く私が遅いのだが。

バスターミナルに戻って、 ミツペ・ラモン行きに乗る。 途中でベドウィンのテントも窓からたくさん見える。 バスの運転手にミツペ・ラモンで降ろしてくれと頼んだら、 ここだと言って教えてくれたのだが、降りて辺りを歩いた所、 「何だかちょっとちがうぞ」と思った。 猛烈に暑く、日射しが強い。 このあたりに家はほとんど無い。 「何だか、大変な所に来てしまったな」と思った。 どこを見回しても、ビジターセンターらしき物はない。 「こうなったら、聞いて回るしかない」と思った私は、 この暑さの中、ベビーカーを押しながら歩いている利発そうなメガネをかけた女性にビジターセンターの場所を聞いた。 結局、幹線道路を出て右に行くとの事。お礼を言って歩き出す。 距離は大した事は無いのだが、 この暑さの中を歩くのは、とても長く感じられる。

ようやくビジターセンターが見えた。 どうも、バスの運転手は、私が「ミツペ・ラモンに行きたい」と言ったので、 ビジターセンターの最寄りのバス停(ガソリンスタンドのある所)ではなく、 それより手前のミツペ・ラモンの集落に降ろしてくれたようだ。 まあ、間違ってはいないが、 外国人旅行者がミツペ・ラモンに来るとすれば、 集落(と言っても家はまばら)には用は無く、 ビジターセンター以外に無いと思うんだが・・・・

とにかく、着いた。これから砂漠のクレーターをトレッキングしようというのに、 ベエル・シェバで散々歩き、 ここでもビジターセンターまで歩き、 早くもバテているのだから情けない。 観光バスも何台か来ていたが、 ビジターセンターの直下まで座って来れる観光客とは最初からハンデがついている。

ビジターセンターは24シェケルで、バイオラモンの入場料込み。 まず、次のバスの時間を聞き(乗り遅れたら悲惨である)クレーターに関する地理的な解説の映画を見て、水を飲んで出発する。 後で判った事だが、実はビジターセンターに入場料を払わなくても、 クレーターは見れるのであった。 さて、ビジターセンターでもらった地図によると、 ビジターセンターの前に道があって、 クレーターの下まで降りられるような印象を受けるのだが、 実際には道なんか無かった。 そこで、クレーターの縁を歩いて行く。 ビジターセンターで荷物を預かってくれれば良いのだが、 そうはしてくれないので、 全ての荷物を担いでトレッキングとなった。

確かにここの景色は雄大だが、 滅多に人に会わない。ここでズルッとコケたら下まで一気に転落して、 助けを叫んだ所で声が届くわけでもなし、 パトロールしている人が居る風でもないので、はっきり言って危険である。 結局、クレーターは2時間ぐらいで暑さでギブアップし、 バイオラモンへ行く。ここは砂漠に生息している動物や昆虫を展示した物で、 はっきり言ってガラガラである。 近所の子供達が中で遊んでいて(入場料を払っている雰囲気はなさそうだった)、 女性スタッフらも客が来なくてヒマなのか、 子供達の相手をしている。 何ともほほえましい光景である。

展示物であるが、トカゲもこんな暑い昼間は岩の下で寝ている。 ヘビとかも、ほとんどはこの暑さでぐったりしている様子。 驚いたのは、砂漠に生息するカタツムリがいる事である。 なかなか大した適応力である。低木にカタツムリが群がっているのは、 ちょっと気持ち悪い。 しかし、サソリのおりは、ガラスが外されていて、 サソリは一匹もいなかった。

水道の水を汲んでいたら、 スタッフが冷たい水をカップに入れて私に飲ませてくれた。 ここのスタッフは親切である。

池があって、オタマジャクシがいっぱい泳いでいた。 もちろん、子供達ももっぱら池の所で遊んでいる。 こんな砂漠に、小さいとはいえ池があるというのは奇跡のように思えた。

さて、もう見る物も無いので、バイオラモンの外の日陰のベンチで横になる。 眠るとバスに乗り遅れるので、 腕時計のアラームをセットした。 バイオラモンには時折グループが来ていた。

バス停で

4:30 に来ると聞いていたバスだが、こういった、 人がほとんど居ない所だと、バスが予定よりも早く来ても、 人が居なければそのまま通過してしまうかもしれないと思って、早めにバス停に行った。 しかしいつまで経ってもバスは来ない。段々心配になってくる。 本当にバスは来るんだろうか。 来なかったらどうしよう。 ミツペ・ラモンにはホステルがあるので、泊まれなくはないのだが、、、

「バスが来ない」とばかり考えているので、 車の音がするだけで「バスかな?」と思ってしまう。

結局、40分遅れでバスは来た。

態度のでかい女兵士

バスに乗って驚いたのは、 運転手の後ろの席に、女性兵士が座席を2人分占領し、 右足を運転手の頭の右後方にある鉄製のバーに投げ出して座っている。 どうやら軍隊では礼儀もしつけも習わなかったらしい。 ここまでがさつだと、それでも女かと言いたくなる。 それとも、私は女だけど兵士なんだ、強くなるんだという意識を植えられたのか。 しかし周りの兵隊(彼女に比べるとおとなしく見える)は、 それほど気にしていないようだ。 彼女の席の後ろが空いていたりするので、 私はそこに座ったが、 結構、周りの兵隊も彼女の近くは敬遠したのかも。 (^_^;

バスは赤い岩の砂漠を走る。ヨルダンで見た光景を思い出す。 実際、距離的にもここはヨルダンに近いのだが。

エイラートのホステルで

エイラートは、熱風吹きすさぶ所なのは他と変わらないが、 街の雰囲気は違う;気さくなリゾート地といった所である。 ホステルはすぐに見つかった。 ホステルは今、改築中で、入口は鉄筋の上にコンクリートを打っている最中で、 臨時の出入口を探すのには時間がかかったが。

チェックインして4号室に入ると中は女性客ばかりだった。 「失礼」と言って受付に戻り、「4号室は女性ばかりだったが」と言うと、 「ここは(男女が) MIX だ」との事で、4号室に戻る。

ここは6畳ぐらいの部屋に2段ベッドが3つと、 かなり狭い所で、ガイドブックを抱えて中に入ると "Another Lonley Planet!" と歓迎してくれた。 (ここでは Let's GO! や Footprint は無名の存在であった) 構成は、多分アメリカ女性が3人。アメリカ男性が1人。 台湾青年が1人。そして、私である。 ここで彼女らと話した内容は、こんな所であった。

さて、ホステルの中をウロついたが、シャワー室が見当たらない。 そこで、台湾人の彼に「シャワーはどこ?」と聞くと、 部屋の奥を指さすのであった。 「これじゃ、空いている時にさっさと使わないと、しばらく入れないや」と思った。

ホステルの子猫

ホステルの近くでパンを買う。割と安い。焼きたてなので、結構いける。 ここのホステルはコーヒー、紅茶はタダ。 紅茶の味に関しては、まあ、タダなんだから文句は言わないとして、 外のテラスに座って食べていると、 なぜか子猫が「ミャ〜」と鳴きながら、パンを狙って私の膝の上に乗ってくる。 隣のテーブルの女の子(メガネ+理知的+清楚な感じ=典型的ユダヤ少女か)が、 「野良猫で、誰もエサをやらないのよ」と言う。 パンをつけ狙っているので、ちぎってやったら、猫はパンを食べ出した。 「猫がパンを食べるの? 肉食かと思ったのに」と言うと、 「いつも肉を食べるという訳ではないわ」との事。 ところがこの子猫、ちぎってやったパンはちょっとだけかじって、 ミャ〜ミャ〜鳴きながら私のパンを狙ってまた膝の上に乗ってくる。 「パンはここに置いただろう? 食べて終えてから次をねだりなさい!」と猫に英語で説得するも、 この辺の猫は英語は判らないようだ。 「パンくれ〜!」と言いたげにミャ〜ミャ〜鳴いて、 私のシャツに爪を立てて、よじ上ってパンを狙う。 「痛てっ! こら、降りなさい!」と猫の爪を外し、 両手で抱えて、ちぎったパンの前に置いても、 それは食べずにまた私のパンを狙ってくる。 おちおちパンも食べていられないが、 どうせやっても食べないのだから、 猫に小判ならぬ、「猫に菓子パン」である。

子猫の猛攻撃をかわしつつ、パンを食べた私は紅茶をもう一杯入れた。 猫は女の子と遊んでいる。今のうちにテラスから撤退し、部屋に戻る。

ヤレヤレ、猫に遊ばれてしまった。

ちなみにここのホステルは洗濯ができない

Last modified Date: 2001-04-04 16:51:08+09


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