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何で私ばっかり?

テルアビブで飛行機を降りると、 すぐに日焼けした面長の男性が飛んできて、「入国の目的は?」と聞かれる。 「観光です」と答え、パスポートを見せて終り。 さて、兵員輸送車みたいな、ガラス張りの檻みたいな車両に乗って、 飛行機のタラップから入国審査に臨む。 パスポートコントロールの方に歩いていたら、 野球帽をかぶり、 手にトランシーバーを持った女性のセキュリティー担当者が走り寄ってきた。 職業柄からか、非常に厳しい眼つきである。 散々質問され、パスポート、旅行計画に加え、職業を聞いて、 会社の名刺まで見ていった。
たまたま私の勤め先の名刺は、 もし外人相手に仕事をする事になっても使えるように裏は英語で刷ってあった。 後で聞いた話しでは、 日本語の名刺は、持っていても読めないので、 身分証明の役には立たないとの事。
「何で名刺まで見るんだよ!」と思った。 こんな物まで見たのは、世界でイスラエルが初めてだ。 ソ連ですら、ここまでうるさくなかったぞ。 だいたい、何で他の客は聞かないで、私だけ聞くのか?

おかげで、パスポートコントロールは行列のドン尻に並ぶ羽目になった。 待っていても、私の後ろに並ぶ人は誰も居ない。

パスポートコントロールでは、 旅行の日程などを聞かれたが、 まあ今までに比べればマシな方。 旅行計画表を見せたら、 「よく計画してあるわね」と、お誉めの言葉。 (もっとも、計画を立てていなかったら入国できたかどうかわからないが) 「エリコに行く予定は?」と聞かれ、無いと答える。 (行ける状態ではないと思うのだが) ついでに、エリコ以外に、特別に注意が必要なのはどこかを尋ねると、 "Eilat" と言った。「エイラート?!」彼女は続けて言った。他に "Dead Sea, Sea of Galilee North part" それじゃ、行く所全部じゃないか。

パスポートコントロールを抜けると、また男性が飛んできた。 「旅行の目的は?」 すると、さっきの野球帽の ねえちゃんが 「彼には聞いたわ」と男性を制し、「協力ありがとうございます」で終り。

こういう風になった理由として、 警察庁 の Web に記されている内容がヒントになる。

こういった過去の経緯を知っていると、 厳しいセキュリティーチェックや、 納得がいくまでは犯罪者扱いされるという目に遭っても、 「以前にこんなひどい事があったにも関わらず、 イスラエルを訪問したいという日本人旅行者のために、 ここまで手間ヒマ・人件費をかけてまで安全を確認し、 入国させてくれるのだ」と思えば、 幾らか我慢できる。


空港で

空港の arrival ゲートでベンチに座って時間を潰す。 この付近に、銃乱射事件の記念碑があると空港の見取図にはあったのだが、 目が悪くて見つからない。 テロ防止のために、パンチングメタルでできている ベンチは座り心地が悪い。 手すりで区切られていて、横になることもできない。 ヤレヤレ・・・・ 蚊に刺されて痒い。

その後、到着ゲートの方のトイレで洗顔をした。 トイレの近くの通路でアメリカ人とおぼしきグループが、 出発まで時間を持て余している様子が見え、数人は横になっている。 [やった、この辺なら横になれる!」と思い、 トイレの近くのゴミ集積場で寝袋で寝ている人間を見つけ、 ヤレヤレ、仲間が居た床に新聞を敷いて横になる。 空港でビバークする予定があったので、新聞は機内で確保してあったのである。 着る物もマトモに持っていないので、寒い。新聞を体の上にもかけると、 結構寒さが違う。そんなに眠れるわけではないが、 とにかく横になれるのが嬉しい。ここはトイレも近くて便利である。 それに、ここは警備が万全なので、 浮浪者を襲撃するような悪ガキの被害に遭う心配も無い。

それにしても、銃乱射事件を起こした人間と同じ国籍の日本人である私が、 事件現場の近くで野宿するのはいささか気が引けた。 とにかく、平和がなによりである。
寒いし、ここで寝ていても落ち着かないので、 結局5:30に起きて、顔を洗い、 両替して、バス停に行き、 6:30のバスでエルサレム郊外のバスセンターへ18シェケルで行く。 ここから20番の市内バスで Jaffa Gate へ。 Jaffa Gate から旧市街に入り、 少し迷いながらも Al Hashim へ行く。

Al Hashim で

受付の話しによると、 夏の旅行シーズンは、安い相部屋は メチャ混みで、 予約無しで泊まるのは難しいとの事。 Let's GO! を抱えた旅行者が諦めて帰っていく。 疲れていた私は $25 でシングルで妥協した。 朝食を15シェケルで取って、シャワーを浴び、 下着を洗ってヒモで吊るして観光に出発。
ところでこの Al Hashim は、旧市街の中にあって、観光には便利だ。 $25でシャワー、トイレ付きのシングルがあり、 朝食は15シェケル(または$3)で食べ放題。 機内食もまずくはなかったが、 焼きたてのナン、 採れたての野菜と比べられない。 うまい、うまいと食べちぎった。
インターネット端末は15分で6シェケルだが、 うまく動いていなかった。 部屋には空調があるが、なんとシャワー室には換気扇も空気窓も無い。 日本なら、すぐにカビが生える所だが、 ここは乾燥しているので、こんな物でも構わないようだ。
旧市街はどこもかしこも面白いので、あてどもなく歩いてしまう。 まず、Via Dolorosa。 とは言っても、 Al Hashim は Via Dolorosa のすぐ近くなので、 必然的に、何度も言ったり来たりする事になる。 ブラついているうちに The Cardo 、そして Zion Gate に来た。 Jewish Quarter を歩いて、ここは入っていいのかな?と、 小道を歩いていたら、ユダヤ教徒のお兄さんに睨まれ、 「こっちだ」と言って、元の道に戻るように指さした。 「サンキュー」と言って、とぼけて逃げる。 「ここは観光地ではない。我々の居住地である」 といった態度を示す人もいるので、 あまり地元の人間を怒らせないようにしないといけない。 まあ、セーフだった部類だろう。

出土した古代遺跡の発掘現場を見たりしたが、 どうも非効率的なので、 「面倒臭いから、計画通りに見るか」と思い、 The Citadel (Tower of David Museum) に行く

Tower of David

Tower of David Museum の入り口のセキュリティーチェックは 難なく通過したが、チケット売り場の「入場料 35シェケル」という方で 「通せんぼ」を食らってしまった。 つまり、お金が足りないので、そのまますごすご引き返すのは恥ずかしかった。 ツーリストインフォメーションに寄って、 地図を15シェケルで買ったが、この地図たるや、 アムステルダムで地図より酷かった。
旅行前にイスラエルの政府観光局で事前にエルサレムの地図を 貰っていたのに、それを忘れてくる私が悪いのだが
インフォメーションの中に両替所がある。 "No comission" とあるが、米ドルT/Cのレートを聞くと、 $1=3.9シェケルとの事。 空港の、現金のレートより悪いじゃないかと思って、 「手数料無しだぞ」と言う声には左右されず、ここでの両替は断る。

インフォメーションを出て、 Exchange と書いてある所に行った。 $1=4シェケルで、手数料は無し。 $100のT/Cと引き換えに1004シェケル札を4枚手に入れる。 お金が手に入ったので、水を6シェケルで買って、 Tower of David Museum に行く。

Tower of David の中には、ウォータークーラーがあって、 冷たい水が飲める。 入場直前にミネラルウォーターを買って持参したのは、失敗だった。
塔に登る。ここからの眺めはいい。 メチャクチャ 暑かったけど。

歩きつかれたので、空調の効いた部屋でフィルムの上映を見ると、 すっげ〜くだらない人形劇で、 趣旨は

  1. 昔、ユダヤ人はイスラエルに住んでいた。
  2. ローマ帝国に占領された。
  3. ユダヤ人は、世界に散らばって済んだ。
  4. しかし、ユダヤ人は戦後に続々とイスラエルに帰ってきた。
  5. 私たちは、荒れていたイスラエルに木を植え、道路や橋を作り、美しい国にした。
と、パレスチナ占領を正当化した内容。

大抵、この手の話は、 以前から住んでいたパレスチナ人を武力で追い払って領土を奪った事、 パレスチナという国を消滅させた事、 国連の決議にも従っていないという自分達に都合の悪い点には一切触れず、 逆に些細な点を理由にパレスチナ人は国土を荒れ廃れさせていたと酷く誇張し、 みんな聞いてくれ、こんな連中にはこの土地に住む価値は無かったのだ、 むしろ私たちがこの土地を立派に生まれ変わらせてやったのだというパターン。

どうやら、子供にシオニスト運動の立場を植え付ける物らしい。 そういった特定の側の政治的プロパガンダに賛同する事はしないが、 ここは涼しいし、椅子がある。 暑さで疲れた体を休め、昼寝するには最適な場所である。

さて、ここには17世紀のエルサレムの模型がある。 確かに、貴重な資料ではあるが、 ガイドブックを読んで、高すぎる期待を抱いていた私の目には、 ボロっちい模型に思え、 ちょっと失望した。

腹が空いたので、背に腹は換えられず、カフェテリアで何か食べることにする。 しかし、ここは高い。 紅茶が8シェケルと言うのでびっくり。 クロワッサンも8シェケル。 こういう、高い所では少なく食べるというのが鉄則であるので、 コーラとクロワッサンを頼んだ。

次は Ramparts Walk。 Tower of David を出てすぐ、Jaffa Gate に入り口がある。 確かに、城壁からの眺めはいいのだが・・・・ とにかく暑いし、疲労困憊しているので、 心が景色を見ても感動できない状態になっている。 よって、Ramparts Walk 巡りは半分だけ終えて、 残りは後日する事にする。

Western Wall

Ramparts Walk の南側コースは Dung Gate で終わる。 せっかく Western Wall の近くに来たので、 見に行くことにする。

入り口にチェックポイントがあり、 荷物を調べ、金属探知機を通る。 私はカメラとガイドブックしかないので、すぐに終り。

雲1つ無い青い空。日本の空とは青さが違う。空の下には嘆きの壁。 私は「写真を撮ってもいいのかな」と思いつつ、 他の旅行者達が撮影しているのを確認して、 私も目立たない様に写真を撮った。

Ultra Orthodox のトーラの解釈では、 人物写真は偶像と見なされる
さて、日本から持参した帽子を被っていたので、 入ってもいいかと入り口で尋ねる。 「入ってくれ」というので、恐る恐る中に入る。 ここは、ユダヤ教徒にとっては神聖な場所なのだ。 しかし、ここは「観光地」ではなく、 ユダヤ人にとって「聖地」であるという事に配慮し、 神殿をバックに写真を撮ってくれるように頼む的な、はしゃいだ行動は遠慮した。 石と石の隙間に祈りの句を記した紙片がはさまっている。 祈りを捧げるユダヤ人達を後にし、 水飲み場に行く。ここの水(トイレの前の方の水飲み場)は、割と冷えている。

外庭を出る。さすがに疲れた。 Al Hashim では夕食の提供は無いので、近くの食堂で取った。 ここは値段が看板に書いてあるので、安心である。 らだ、ビュッフェ形式のサラダは、 蓋がしていないので蝿が止まるのではないかという気もする。 ケバブとチップスとサラダで24シェケル。紅茶は4シェケル。 ここは量が多い。

宿に戻ってシャワーを浴び、下着を洗ってシャワーのカーテンレールに干す。 今日は疲れたので寝る。

Last modified Date: 2000/07/31 11:01:52


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