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機内で

KLMのサービスに関しては、 ソ連時代のアエロフロートの伝説的な"サービス"で"鍛えた" 私には十分に思える。 ただ、日本人ステュワーデスが3人なので、 英語が全く駄目な人は厳しいかもしれない。
ちなみに私の席には日本人ステュワーデスは1度も来なかった。 恐らくツアー客(英語で食事や飲み物が頼める人がほとんど居ない)の所を受け持っているものと思われる。 英語すら通じないステュワーデスがほとんどのアエロフロートの国内線に慣れている 私にすれば、日本人ステュワーデスが居るかどうかなんて全くどうでもいい事なのだが、 人によっては日本人ステュワーデスが多いかどうかをエアラインの良し悪しの判断材料にする人もいるようだ。
成田→アムステルダムのフライトは11時間なので、 そんなに長時間椅子に座ってじっとしているとなると、苦行のようなものである。 私の席は通路側だった。ここだと窓から外が見えないが、 隣の乗客に「すみません」と気兼ねする事なく、 好きに席を外して体を伸ばしたりできるので、 エコノミークラスの長時間のフライトの場合はかえって好都合かもしれないなと思った。

全然予定に無かった事だが、乗り換えに時間があるので、 スキポール空港からアムステルダムの中心部に行くことにする。 出国してツーリストインフォメーションを探す。 しかしスキポールは広い。結局、空港内をブラついて、 トイレでヒゲを剃って、 両替をし、ツーリストインフォメーションで地図を買って、 アムステルダム中央駅行きの切符(往復で11ギルダー)を買って、 電車に乗っただけなのに、もう1時間経っていた。 こんなスローペースだと、街を一眺めして終りだなと思う。

この4ギルダー(1ドル=3ギルダー)の地図だが、 最悪。ちっちゃくて、表記はオランダ語だけ。 名所の案内などは皆無に等しい。 「これでどうやって観光しろというのか?」と聞きたくなるような地図だった。 もっとも、オランダを観光する事は全く準備していなかったので、 事前に情報を仕入れていないのだから、 あまりうまくいかないのは仕方が無い。
電車は2階建てで景色が良く見える。 アムステルダム中央駅に着いた時、 女性の車掌に「空港に戻るプラットホームは何番ですか」と聞くと、 「15」と教えてくれた。 空港に戻るときに乗り間違えたりすると大変な事になるので、 事前に聞いておけば助けになるだろう。

アムステルダムの中心部は、結局地図も見ないで勝手に歩く。 天気もよく、運河沿いの目抜き通りの眺めは悪くない。 でも、運河の水はドブのように汚い。 それでもいいや。今度来た時は運河のクルーズに乗るかな、と思った。

歩いてダム広場に来た。やはり日本人が大勢いる。(私も日本人だが) ダム広場名物の「しつこいハト」がいっぱいいる。 ヒッチコックの映画の「鳥」を思い出す。 ここのハトは、 エサのためなら人間の手にも乗るというずうずうしいヤツらである。 でもせっかくだから記念にエサを買って、 「手乗りハト」をしている様子をその辺の観光客に撮影してもらおうかとも思ったが、 フンをされると嫌なのでやめた。 代わりにスタンドでホットドッグでも買って食べようかと思ったが、 7ギルダーという値段が安いのか高いのか、計算できずにちっとも判らない。 まあ、いいか。機内では何か出るだろう。

さて、かなりグロッキーである。そりゃ、そうだ。 一昨日寝たのが2時間ぐらい。昨日は3時間ぐらいか。 その前も、旅行の準備で睡眠時間が十分ではなかった。 おまけに今日は西に飛んだので、 1日が長い。日本なら、もう午前零時である。 こうなると、美しい景色ももう目に入らない;色褪せて見える。 それに、疲労で自転車がうまく避けられない。 ボ〜ッと歩いていて、気が付くと道の真ん中を歩いてしまい、 後ろからベルを鳴らされる事が幾度。 「ダメだ、こりゃ。轢かれて死んじゃう。」 市内観光は切り上げてスキポール空港に戻る。 「でも、20ドルを両替しただけの割には、結構アムステルダムの街は楽しめたな」

中央駅に戻り、車掌から聞いていた15番ホームに行く。 ちょっと待っていても電車が来ないので、「変だぞ」と思った。 (空港行きなら頻繁に出るはずだと思った) 掲示してある時刻表を見ると、 どうも空港行きは、この時間帯は15番ホームから出発するのではなさそうだ。 そこで13番ホームに行く。13番も、13のaと13のbがあるので、 要注意なんだが、多分これだろうという列車を探した。 車掌でも居たら、確認しておきたい所だが、出発間際だったので、 多分大丈夫だろうと判断して乗ることにした。 ヨーロッパの電車は乗り慣れていて、時刻表も読めるのだが、 これで乗り間違えたら悲惨な結果になりかねない。 一抹の不安を感じながら、車窓から景色を眺める。 来た時と同じ途中駅に停車している。 これで合っているようだ。どうやら、ちゃんとイスラエル行きに乗れそうだ。

入国審査

イスラエルに行く飛行機に乗るだけで大変だと聞いてはいたが、本当にすごい。 イスラエル行きの飛行機が出る出発ゲートの周りには、 約1m間隔でポストが立てられ、 ポストの間には赤い布の帯が張られている。 まるで、出発ゲートの一帯がボクシングのリングのように囲まれている。 不思議に思って、 たまたま"檻の中"からこちら側に近寄ってきた女性係員にボーディングパスを見せた。 「入れてくれるのかな」と思ったが、彼女は苦笑するだけで、入れてくれなかった。 なんで「後は乗るだけ」なのに、こんな風に赤いテープで囲って、 周りに人が並んでいるんだ?

行列が進み、私も赤い囲いに入った。 私の"尋問"を担当したのは、年配のメガネの男性だった。 こういった内容を聞かれた。

係:入国の目的は?
私:観光です。

係:観光なら、国は他にも沢山あるだろう! なぜイスラエルなのか?
私:聖書の地も訪問したいと思っています。

係:イスラエルで何をするのか?
私:(旅行計画を示して説明する)

係:このホテルはどうやって決めたのか?
私:ガイドブックを見て決めました

係:予約はしてあるのか?
私:いいえ。でも、もしホテルが一杯なら、ガイドブックのホテルのリストを見て他所に泊まります

係:8日間の旅をする人間が、荷物がこれだけ(荷物は自転車の前のカゴに入る程度しか持っていない)だと言うのか! 着る物はどうするのか?
私:途中で洗濯します。

係:イスラエルに家族か友人はいるか?
私:誰もいません。

係:誰もいないというなら、このメール(印刷してあった)は一体何なのか!!
私:インターネットで予約したエイラートのドルフィン・リーフの確認のメールです。

係:航空券は誰が支払ったのか?
私:私が買いました。

係:どうやって支払ったのか?
私:現金で。

係:なぜ現金なのか。クレジットカードは持っていないのか?
私:日本ではカードで買い物をする事は少なく、現金払いが普通です。

係:日本から直接イスラエルに行かず、アムステルダム経由で行くのはなぜか!
私:日本からイスラエルに直接飛ぶフライトはありません。

係:(パスポートを見て)アムステルダムでいったん、出国しているが、それはなぜなのか!
私:乗り換えに時間があったので、空港で待っているよりもいいと思って市内観光に行きました。

係:そこで何か荷物を預からなかったか?
私:いいえ。

係:(入国時の参考にベングリオン空港の見取り図をイスラエル政府観光局の Web からダウンロードして印刷した物を見て)これは何の図か?
私:空港の地図です。(持ってくるんじゃなかったと後悔)

なんでこんなに聞くんだよ・・・と憮然とする。 「ここでしばらく待て」と言われ、係官同士で協議を始めた。 そして、再び私のところに来て、「不便をかけて申し訳ない。 これは、あなたの安全を確保するためんなんだ。良いご旅行を」 と言って、OKを出してくれた。

いや〜、私は割合に英語が好きな方だからまだいいようなもの、 これじゃ、大抵の日本人旅行者だったら、入国できないんじゃないか? と思った。 イスラエルの政府観光局のパンフレットを見ると、 旅情をかきたてるような内容なんだが、 これでは、実質的に「来るな!」と言っているも同然じゃないか。まったく。 旅行者に来て欲しくなけりゃ、パンフレットにちゃんとそう書いておけってんだ! それに、これだけ 聞いておきながら、 荷物の中は全然見ないのか。 それより、さっさと荷物全部見て、通してくれればいいのに、と思った。 まあ、いいか。時間はかかったが、とにかく入国できるんだから。

私はみなさんに 「いずれにせよ、やましい所は何も無いのだから、何時かは入国できるさ」くらいのリラックスした態度で、 かつ、敬意を払って係官の質問に臨む事をお勧めする。 また、「怪しい者ではない」という、「無罪」を証明するための「証拠」として、 旅行計画なども揃えておくと良いと思う。

機内で

アムステルダムからテスアビブ行きの飛行機は、子連れが多い。 中には、飛行機の揺れや騒音、気圧の変化にびっくりして、泣き叫ぶ子もいる。 隣の席の女性は、周囲がうるさいので落ち着かない素振りを見せたので、 "Baby's are not accustomed to flight" と言ってなだめた。
私は「子供は元気がなにより」という考えをするが、 中には、フライト中に絶叫しまくって手におえない子もいるらしいので、 (全然平気な子もいる。 もちろん、日頃おとなしいとか、落ち着きが無いかという事から、 子供にとって未体験である、飛行機に乗った時の行動を予測するのは無理) 子連れ赴任等の場合は会社に幼児に適した量の睡眠薬を処方できる看護婦を同行させる費用を請求するのも手である。
関係無いが、ここのステュワーデスは成田→アムステルダム線よりもテキパキと働き、 英語も上手い。 食事が提供された。乗客の中には、ユダヤ教の戒律に合う特別食を頼んでいる人もいた。 私は、眠くて飛行機の中は夢うつつであった。

Last modified Date: 2000/07/31 11:01:52


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