Last modified: Wed Nov 9 23:50:23 JST 2016
日本は自然災害の多い国です。内閣府の南海トラフ巨大地震対策の最終報告書では
被災地域では、発災直後は特に行政からの支援の手が行き届かないことから、まず地域で自活するという備えが必要であり、食料や飲料水、乾電池、携帯電話の電池充電器、カセットコンロ、簡易トイレ等の家庭備蓄を1週間分以上確保するなどの細かい具体的な対応を推進する必要がある。としています。(PDF, p. 6)
防災対策推進検討会議 首都直下地震対策検討ワーキンググループも同様で、
被災地域内においては、深刻な交通渋滞等により、避難所への物資の輸送だけでなく、一般の在宅の生活者への生活物資を含めた輸送が困難となることが想定されることから、各家庭や企業等においては、最低でも3日分、可能な限り1週間分程度の食料・飲料水・カセットコンロ・災害用トイレ及び生活必需品等の備蓄及び日常的に一定量以上の燃料(ガソリン満タン、灯油1缶増等)を備えるよう努めるべきである。としています。(参考資料: 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)PDF, p.39)
電気・ガス・水道が使えない状態でどうやって調理するかですが、普通には「カセットコンロ」というのが答えなのでしょうが、別の解を探ってみました。『東京防災』には、アルミ缶に燃料としてサラダ油を入れ、アルミホイルとタコ糸で芯を構成した簡易コンロが載っていますが、そもそも「貴重な食料を燃やすのですか?」という気がします。燃やすなら、食料とはならない物で十分でしょう。
世界人口の38%は料理をバイオマス燃料に頼っています。 (参考資料: Energy access database) 電気・ガス・灯油が使えない場所でも調理可能でコストが安く現実的だからだと思います。ところで皆さんは飯盒炊爨を経験した事はありますか? 薪とかまどと飯盒で、ご飯やおかずを作って食べるイベントです。飯盒炊爨と似た事を災害時に庭などでできれば、電気やガスが無くても調理ができる事になります。
一方、無視する性能として
被災地では。カセットコンロは商品棚から瞬時に消えてなくなると思いますが、枝や瓦礫や廃材など誰も見向きもしないでしょうから、燃料を節約する意味は全くありません。
そこで手始めに材料はスチールの空き缶だけ (アルミ缶は溶けるので使用不可) 燃料は新聞紙という簡易コンロを制作し、ご飯を炊いてみました。
左:以前に100円ショップで買ったステンレス製の容器に米と水を入れます。日向に30分ほど置いておいたら熱くなっていました。
中:今回は、コーヒー缶に燃料投入用の穴をあけ、五徳代わりに、缶の上部に、缶切りの穴あけで開けた物をコンロとしました。地面に置くと腰を曲げっぱなしで作業しなければいけないので、金属製の缶の上に置きました。
右:煙やゴミや灰が入らないようにアルミホイルを被せました。薪の代わりに新聞紙を棒状に折った物を使いました。あまりキツくねじらないほうがいいでしょう。
左:ライターで新聞紙に点火します。紙きれのように良く燃えます。 (動画, 3秒) 火力が、カセットコンロでは不可能な程に大きな炎とする事もできます。何と2分程で沸き始めた音がしてきました。
中:強火で沸騰させた後は、弱火を保たなければいけません。火力は、缶に入れる燃料の量で調節します。新聞を細く切ったものでも、短冊状に切った牛乳パックでも構いませんが、今回は宣伝のハガキを切った物を使いました。
右:最初の実験で炊けるとは思っていなかったのですが、炊けました。もっとも上の方は芯が残り、底のほうはベチャっとしていました。火力が強すぎましたかね。捨てるわけにもいかないので、スプーンで混ぜてなるべく均一化し、蒸らします。なお、米1号を炊くのに消費した新聞紙は1枚と少しでした。燃料の消費が少ないのは日向で温まっていたせいだと思います。
左:ご飯はラップを敷いた皿に移しました。ご飯を炊くと鍋に米がこびりつくが災害時には水は貴重なので洗う水など無いという問題がありそうです。とりあえず、どうせ一人で食べるので、同じ容器に味噌汁1杯分の水を張って同様に沸かします。インスタント味噌汁を入れました。
中:ご飯と味噌汁の食事です。おかずやふりかけはありません。熊本で被災された方々の事を想いながら頂きました。
右:同様に、再び湯を沸かして紅茶を入れました。写真では味噌汁と色の違いが判りませんね。
ご飯は「微妙」な味に炊きあがりましたが、とにかく食事を作る事が可能でしたので、全く使えないわけではないと判断しました。とはいえ空き缶が小さく上に載せる鍋の方が大きい、つまりトップヘビーなためひっくり返りやすく、アウトドアで自作の変わった道具を使ってみたいというならともかく、余震が続く被災地で使うのは危険ですね。
拾ったキーコーヒーの缶で、サイズは直径が108mm、高さは152mmです。少し大きめの輸入のトマト缶と直径が一緒です。日本の食缶規格によると、JIS規格のサイズではないですが、2号缶に近いですね。
ご飯が、最初にしては上出来だったので気を良くして、今度はラーメンを作って説明動画も撮ろうとした所、失敗しました。ラーメンも動画もです。うまくいったという内容だけでなく失敗は失敗だと報告しようと思っていましたが、書く価値もない程に失敗だらけで、とりわけ致命的なのは「新聞紙を4枚消費しても450ccの水を沸騰まで持っていけなかった」です。ご飯はいわゆるビギナーズラックだったのかな。断念も考えましたが、場所を作業場に移し、意地でラーメンを作って食べました。そこで、若干でも様子を知る参考になりそうな部分を紹介します。 (動画, 5分)
動画はスマホで撮って、ffmpeg でサイズを縮小して切り取りました。こんな感じです。
ffmpeg -ss 30 -i MOV_0043.mp4 -t 315 -s 640x360 failed-attempt-1.mp4
ラーメンの失敗を教訓に 250cc の湯を沸かした所、約3分50秒程でした。使用した新聞紙は1枚と4分の1です。紹介動画は以下です。 (2.7MB)
3分50秒見せても有用度が低いので編集してみましたが、画質が著しく下がりますね。やり方が悪いのでしょうか。こんな感じでやりましたが。
ffmpeg -i MOV_0047.mp4 -f mpegts -ss 00:00:01 -to 00:00:10 o6-1.mp4 ffmpeg -i MOV_0047.mp4 -f mpegts -ss 00:03:31 -to 00:03:54 o6-2.mp4 ffmpeg -i "concat:o6-1.mp4|o6-2.mp4" -s 640x360 out.mp4
それにしても焚火と同等かそれ以上に危なっかしい感じですね。沸騰はしたので実験失敗とも言えませんが、煙くて喉や目が痛くなるなど散々でした。鍋にこびりついた黒い煤を見て、「煙を吸えば肺の中に煤がつくわけだな」と思いました。
庭で防災調理訓練をしていると、なんとなく侘しい感じになるが、趣味と万が一の防災にも役立つという実益を兼ねたアウトドア活動の一種、と積極的に考える事にしました。とはいえ「失敗、失敗、また失敗」と続き、それを乗り越える根性が必要です。
コーヒーの空き缶コンロではささやかな物しか作れないので、もっと調理らしい調理ができるように、拾ってきた一斗缶の半分サイズの缶 (以降、半斗缶と称します) でコンロを作って調理してみました。
半斗缶を加工して、五徳は台所のガスコンロの部品を使います。災害時を考え電動工具はなしの定規とマジックとマイナスドライバーと金槌だけで作ってみました。
目印となるようにマジックで燃料投入口の線を引きます。災害時で定規やマジックが手に入らなければこの工程は省略します。
コツコツと…いや、ガンガンとマイナスドライバーを金槌で叩いて缶をちょっとづつ切ります。瓦礫に見立てた廃材を缶の中に差し込んで台としています。 (動画)
苦闘12分で目的の線を切る事ができました。缶を折り曲げます。 (動画)
缶の蓋も、五徳を載せて使うためにマイナスドライバーを金槌で叩いて穴を開けます。慣れていないせいか疲れて手に力が入らなくなりペースが落ちました。
始めてから28分で半斗缶コンロが完成。 (動画)
古新聞を燃料にラーメンを作る実験をしたところ、「火は良く燃えるけど、鍋に張った水が全然沸騰しない」という症状に見舞われました。それで約20分の苦心の末に生煮えっぽいラーメンの出来上がり。いや…「食事はできた」以上、完全な失敗ではないのですが成功には程遠い。燃焼する地点と鍋の位置が離れ過ぎていて火力が肝心の鍋に大して伝わらないようです。燃料が無駄に燃えている、のでしょう。(裸火や三石かまどと比べ、さして熱効率は上がっていないと思われるので、よほどうまくやらないと効率以前に、調理にならない)
実験は夜に行ったため動画も暗く分かりづらいため、再実験しました。「うまく行きませんでした」という事なので、やれば簡単に再現します。でも「良く燃えはするが鍋の中の水は一向に沸騰しない」所を20分、見てもしょうがないでしょうから、動画は3分となっています。
半斗缶コンロは、人と鍋の距離が遠すぎるのが敗因と思われるので、三つ石かまどに近い構造になりますが、煎餅の空き缶でコンロを作りました。半斗缶コンロと同様に、マイナスドラーバーと金槌で空気&燃料用の穴を開け、ガス台の五徳を載せるだけです。煎餅の缶と五徳のサイズによっては、五徳が滑らないように針金で縛る、といった工夫が必要です。被災時に鍋が五徳と一緒にツルッと滑って手足を火傷、のような事故が起きては大変です。下の右側の写真ですが、五徳が針金で煎餅缶に縛り付けてあるのがご覧になれるでしょうか。
燃料はダンボールで、インスタントラーメンを作りました。具に卵と乾燥野菜を入れています。緑色の250ccのスチール缶は、片手鍋のプラスチックの取っ手を煤や炎から守る目的です。
(私が購入した) 切り干し大根を主体とした乾燥野菜は、ラーメンの具には向かないですね。
飯盒でご飯を炊いてみました。燃料はダンボールです。思いの外、上手く炊けました。ですが実験後に感じました。「災害時に、ご飯がこびりついた飯盒を洗う、きれいでたっぷりの水なんか、どこにあるんだ?」と。それで、即席コンロと飯盒とダンボールでご飯が炊けるという可能性に関して証明できたのはいいけれど、いちど炊いたが最後、飯盒を洗えないとなると…「この方法は災害時には使えない可能性が高いな」と判断しました。もし使えるとしたら、ガスも電気も止まっているが水はたっぷり使える、という場合だけでしょう。
お断り:私は一発で炊けましたが、飯盒炊爨と同様ですが、やってみたが上手く炊けないじゃないか! という方もいらっしゃるかと思います。ガス台で飯盒でご飯を炊く練習を重ねて失敗なく炊けるコツを習得したという方でしたら、ダンボールでも炊ける見込みは高いと思います。
これらの実験により、煎餅缶コンロに関しては、「風の弱い日なら実用になる」と判断します。なお風が強い日は、熱は風に流されてしまって鍋は温まらないし、灰だけでなく火のついた紙片まで飛ぶ恐れがあるので、使わないでください。
手入れが手間なのであまり使わなくなっている、10インチのダッチオーブンを缶にはめてみました。今度の燃料は、リボン状にちぎった段ボール。例によって、「良く燃える (火力は強い) が、ダッチオーブンを熱するのに有効に利用されている熱量は少ない」となり、フラットブレッドというより具の無いお好み焼きでしたが、作るのに40分ぐらいかかりました。これだと、無いよりマシと言うのがせいぜい、となりましょうか。
廃材を割った薪を燃やしてみました。内容物は、塩を振った鶏肉と、ジャガイモと、食べるのを忘れていたカット野菜です。
燃えている動画です。 (40秒)
調理後。
ダッチオーブン料理の定番とも言える、鶏肉とジャガイモを焼いた料理ですが…食べられないわけではないが、美味しいとは言いがたい出来栄えでしたね。塩は振りすぎたし、火も通っているのか怪しい部分もありました。ジャガイモは食べられなくはないけれど少し固かった。
失敗作だった半斗缶コンロの使いみちができたという点では成功と言えますが、これは要するに、ダッチオーブンをはめ込む事で鍋底と炎の距離が近くなったからに過ぎません。料理の出来栄えに関しては練習次第で改善可能かもしれませんが、とにかく「時間と手間が掛かり過ぎ」「料理後の鍋の手入れが大変」というのは、災害時には重欠点となるでしょう。
それから、こんな事はみなさんの参考にはならないと思いますが、カット野菜は十分に火を通したかったので途中からではなく最初から入れましたが、そのため炭化している割合が高く、それでも少量を口に含んでみたところ酸っぱい味で明らかに腐っているので吐き出しました。
不法投棄されたゴミの中から、五徳を発見しました。ずうずうしい私でも、気が引けるほど汚かったです。ですが、世界の平和のため(?)に勇気をだして拾って参りました。使い捨て手袋をして台所で古歯ブラシを使って洗いましたが、年季の入った油汚れは、なかなか落ちませんでした。そして「炎で熱すれば、ばい菌が付いても消毒されるだろう」と思って、ほどほどにしました。これで実験専用の五徳が手に入り、台所のを外して実験するより手間が省けます。
ようやくコツが掴めてきたので、薪で焼き肉を作ることにします。、タアサイ、モヤシの順に焼きます。(動画: 33分20秒)
煎餅の空き缶に五徳を載せ、ダッチオーブンを載せます。細く割った薪を差し込みます。紙パックを短冊状に切ったものを助燃剤に薪を燃やします。私が、火をおこす動画で固形燃料や液体燃料を使っていたら、その人はヘタクソだ、という理由が納得いただけると思います。100g 88円のカルビ味付け焼肉用豚肉をダッチオーブンに放り込みます。薪が燃えるにつれ、薪を置くに押し込みます。食べないと他のものが調理できないので、焼け次第口に運びます。なお、生肉を扱った箸を食事に兼用するのは食中毒の観点から好ましくありません。鶏肉の場合は特に危険です。ま…幸い、食中毒にならずに住みましたが。火力が強すぎて肉が焦げ気味です。野菜も摂るべくタアサイの茎を投入。薪の操作は常に必要です。タアサイの葉を投入し、モヤシも投入します。蓋を閉めて蒸し焼き風にします。
カップうどんの空き容器に小麦粉と水を入れ、スプーンで練っただけのシンプルな物を注ぎ、スプーンで広げます。 (動画: 40秒)
前の調理の燃えさしの薪をくべ、新聞紙に火を付けてを差し込みます。 (動画: 1分30秒)
燃えるに従い、薪を押し込みます。これをやらないと火の着いた薪が落ちます。フラットブレッドを箸でひっくり返そうとしますが、こびりついて剥がれません。 (動画: 35秒)
15分ほど掛けて焦げすぎもいい所のフラットブレッドができましたがとにかく食べる事に。次いで火事を起こさないように後始末をします。今回は動画撮影の都合で、まだコンロや五徳が熱いうちに作業していますが、火傷の危険があるため、みなさんの場合は火が燃え尽きてコンロや五徳が冷めてきたと判断されてから、蓋のついた金属製の容器に灰や薪の燃え残りを入れてください。ポイントは、水が貴重な被災地で、水をコンロにドバっと掛けて消化および火の不始末を起こさないようにするのは不可能ですし (池、川、プール、海の水なら別) コンロの劣化も進みますので、消火用の水などは無しで火の不始末を起こさないようにする事です。 (動画: 1分52秒)
実験を重ねた結果、趣味のように「半斗缶コンロと薪や新聞紙やダンボールを燃料に色々な料理を作ってみたぞ、どうだ!」ではなくて、料理全体を「システム」と捉え、災害の場を想定して一層の工夫する必要があるなと感じました。
災害の想定は色々ありますが、やはり災害発生時直後の「水道断。水の備蓄も僅か」で、水がとてつもなく貴重&生死を分けかねない状況を生き延びるとすると、極限まで水を使わない料理でなければならない、鍋を洗うなどとはもってのほか、となります。阪神淡路では、ペットボトルの水は怪我人の傷の手当で使い果たした所もあったと聞いております。よって、焼き肉とか焼きそば、カレーライスを作るのは論外、煮物も鍋を洗わないと駄目だから作れない、ご飯を炊くのも後で洗うから同様、となります。
こういうのは、上水道が使えない想定で料理を何食かぶんを作ってみればすぐにわかります。この辺が分かっている災害料理指南本と、分かっているとは思えない本があります。
災害直後は、被災地は大混乱かつ人命救助を優先しないといけないので、「料理なんかしている場合じゃない」とのことです。
あいにく薪ストーブはカセットコンロより手間がかかります。水がない局面では、うっかり鍋を触って煤で手が汚れてしまった、となりがちなのも欠点になります。何度も鍋の蓋を開けて様子を見て料理をかき回す、火力を調節する、なども避けたい。
人参・玉ねぎ・ジャガイモ・肉などの生鮮食品や無洗米から手間暇かけて薪で調理して食べられる物を作るのは災害直後では厳しそうです。そういうのはレジャーでキャンプする時にでもする事にし、蒸すだけで温かい食事になる食材を調達してみました。今回は入手し易さから、100円ローソンを利用しました。
他には卵、あとはちょっとルール違反ですが、カット野菜の残りを汁の具にしました。
コンロとダッチオーブン、食材、燃料と焚付の新聞紙を仕込みます。 (動画: 4分40秒)
すぐに火が消えてしまったので、ジュースの空きパックを切った物を助燃剤にします。 (動画: 15秒)
空きパックの威力で火が燃えてきました。 (動画: 1分)
火力が強くなってきたので、節があるために割る事ができず太いままの薪を燃やす事を試みます。太い薪はなかなか燃えませんが、このような即席の簡易コンロでも良く燃えて煙も出ず鍋から湯気が出ている所をご覧ください。 (動画: 3分)
沸騰したら、煮込みを継続する段階に入ります。火力を、煮込みが維持できるだけの強さに弱めます。高性能な調理用薪ストーブでしたら「燃料投入口の窓を閉じて空気の量を減じ、薪が燃えて出来た炭火で煮込む。その間は傍を離れて他の用事をする事も可能」といった事もできますが、この簡易型のコンロではそういう芸当はできません。火力を弱めるには燃料とする巻の本数を減じます。すると炎が消え易くなって薪の操作で手が離せなくなり、それでも消えたりもしますが、消えた場合は細く割った燃えやすい薪を添えたり、ジュースの空きパックを燃やして、再び燃えるようにしてください。炎が消えるのを嫌がって無駄にガンガン燃やすのは、いかがなものかと思われます。 (動画: 1分20秒)
結果ですが、初めて「大成功」と言える食事が用意できました。温かいごはんと、ゆでたまごと、カレーと、味噌汁です。パックごはんも、災害時だったらと考えれば、無洗米の炊きたてでなければ嫌だとか、そんな我儘を言っても仕方ありません。
設営の仕方です。穴を開けた煎餅缶に、五徳を載せます。グラグラしない事を確認し、鍋を載せます。新聞紙で即席の薪を作って火を付けます。
新聞薪の薪を作りながら燃やし続けるのは、燃え尽きるペースが早いので無理だと分かりました。点火する前に用意しないとダメです。そこで新聞薪の薪の作り方を詳しく紹介します。新聞を横に4つに割いて、グシャッとすぼめて棒状にします。あまりきつく丸めたりひねったりしないほうが空気に触れる面積が取れるので煙を出さずに良く燃えます。蛇腹のようにするのが最善ですが、大雑把で構いません。
作り溜めした新聞薪の薪で再度コンロに点火。動画の中で、新聞薪の薪を2本つづ交互に入れて燃やし続けるテクニックをご覧ください。別に難しくは無いですが、これができないと新聞紙で調理をするのは無理だと思われます。
やっと沸騰しました。乾燥の「煮物の具」と、袋麺は中華三昧を入れました。ちなみにラーメンと具を入れたら、温度が下がってしまいましたので、さらに新聞紙の薪を燃やして加熱しました。
時間はかかりましたが、まぐれ成功というか、生煮えでも延び過ぎでもないラーメンができました。中華三昧なので、美味しいです。
火の始末をする方法です。火事を起こすわけにはいかないが、貴重な水をかけるわけにもいかないので、灰や燃えかすを金属製で蓋のできる容器に入れます。軍手をしていても、軍手が煤だらけになるのを避けるため、適当な紙切れを介してなるべく缶に触れないようにします。私はたまたま、某自治体が防災用にと配布したものの使わないから捨てるという事になったバケツぐらいの大きさの缶を貰って使用しています。みなさんは、蓋ができる一斗缶などでも良いと思います。
実験をした日の条件としては、気温12.8度、湿度70%、風速4m/sです。(実測ではなく気象データに基づく) 感想ですが、利点としては、入手し易い古新聞でとにかく調理ができる、点火が容易、火力調節がしやすい、調理が終わればただちに灰になるので後始末がしやすい。欠点と思える点は、私は何度か失敗の末にできるようになりましたが、みなさんが再現する場合は練習が必要でしょう。慣れないと危険です。それに、薪に比べて煤が多いような気もします。(PM を測定する装置などは無いので正確には分かりませんが)
Mulligan stew は「野菜と魚、あるいは野菜と肉やソーセージのごった煮料理」ですが、焚き火に鍋か空き缶を置き、手に入った野菜や肉なら何でも入れて煮て塩胡椒で味付けしたもの。代表的な材料はジャガイモ・玉ねぎ・鶏肉。もっと豪華なレシピになると、人参・セロリ・トウモロコシ・豆類が加わり、味付けもベイリーフ、ガーリック、オレガノ、バジル、ディルが加わり、最後にパセリを散らしたりもする。サラダ油を加え小麦粉でトロミを付けるレシピもあります。EASY MULLIGAN STEWというレシピでも、災害時に作るのは易しくないですね。
しかし災害時に作るものですから、味付けは固形のコンソメだけとします。
これらを煮て、火が通ったら食べます。
材料は、ちょっとルール違反気味ですが、解凍したミックスベジタブルを半分、340g の SPAM 缶の半分を、使いました。鍋代わりにしたのは、イタリア産のトマト缶の空き缶です。火を付けて6分ほどで沸騰しました。火力が強すぎるので、木を幾らか引っ張りだして、振るって炎を消し、地面に置きます。炎を消した薪は煙が出ます。
ここで、「本当に拾ってきた枝の燃え方」を紹介します。コンロの右側にくべたのは、夏に剪定したモミジの枝を庭に放置したものです。雨が掛からないように屋根をかけたわけではないので濡れたり乾いたりですが、理屈の上では雨は木の中までは染みないので乾燥が進むはずです。自然の状況に近いとも言えましょう。この枝を、ノコギリで扱いやすい長さに切断しました。切り口は直径2cmほどです。今までの動画で何度も使っている廃材を割った薪と燃え方を比べると
点火から燃焼まで。火が強すぎるので、薪を取り出しています。
剪定したもみじの小枝を燃やすところ。
私もようやく点火に慣れてきたつもりでしたが、なぜか煙が凄く、まるで素潜りをする人間が海面で息を吸っては潜るのを繰り返すように、煙の立ち込めるコンロから離れて息を吸っては、戻って薪を操作する、といった感じでした。
先ほどシチューを作った空き缶からスプーンで直接中身を平らげ、洗う水も節約して、湯を沸かして紅茶の葉を放り込み、ステンレスのカップに注ぎました。シチューと薪の点火関係は同様なので動画は省略します。
(実験を計画しています)
沖縄は訪問した事が無いが「ポーク卵」という物が定食屋にあるらしい。それに、YouTube の動画などでは、空き缶でコンロを作って目玉焼きを作るというものを見かける。また、アウトドアでスキレットを用いて料理、という動画も見かける。スキレットをニトリなどで購入してもいいのだが…私は「まずは100円ショップ」という考え方をします。昔はダイソーで100円で売っていた頃もあったようですが、大規模店でも315円のショボい物しかありません。そこで、以前にミーツで購入した100円のフライパンを使うことにしました。なお、今では見かけません。
プーリーとはインドの揚げパンです。煎餅缶コンロに廃材を割った薪をくべ、着火剤代わりに干したジュースの空きパックを短冊状に切ったもので点火します。スキレットと異なり、柄がプラスチック製なので、溶かさないように注意。油を多めに入れる。熱せられたフライパンから「パン」という音がする。大丈夫なのか? 「頑張れ、100円の薄いフライパン!」と声援を送る。小麦粉と水だけの生地を流し入れる。ここで事故発生。熱しながら生地を流し入れるのに気を取られ、薪の操作が疎かになって火の着いた薪が燃えてひっくり返って落ち、三脚の下に敷いていた新聞紙に延焼 (三脚をどかしたのでプーリーを焼く動画はここまでとなります)
灰になった新聞を片付け、気を取り直して調理再開。卵をフライパンに割り入れ、厚みを半分に切った SPAM を入れます。併せて焼き上がったプーリーをご覧ください。イマイチ清潔感に欠ける皿に盛っていますが、大丈夫です。サランラップは敷いています。ものの1分程でパチパチと音がしてきます。火力が強すぎて、薪を何本か間引きます。フライパンで炒める場合は、鍋等に水を入れて沸騰させる場合と異なり、熱容量がずっと小さいので、燃料は少なくしないとダメですね。
SPAM を半分に切っただけでは、焼くには厚すぎると分かりました。縦半分に切りましたが、あまり改善が見られません。でも、SPAM はいざとなれば加熱せずに食べることも可能なので中まで十分に火を通さなくても食中毒の恐れはなく防災食として優れていると思います。要するに缶にソーセージの中身を詰めたものです。よって「焼けました」というより、目玉焼きは焼けたし SPAM は温まりました。
プーリーは、油っこくてカロリーが取れそう。今日は紅茶はありません。スープも無しです。代わりに野菜ジュース。全体として、「空腹が満たされる」というより、食べ尽くすのに気合が必要な量になりました。被災直後にこれだけ食べられれば十分過ぎると思います。もっとも、これにしても「災害時に、油がこびりついたフライパンを洗う、きれいでたっぷりの水なんか、どこにあるんだ?」の問題は残ります。改善が必要ですね。
SPAM は、あくまで練習という事で、340g の普通サイズの物を半分にして、冷蔵庫に入れた昨日の実験の残りをて今日は別の料理を作りましたが、実際の災害時には冷蔵庫などありません。家族の防災用であれば 340g 缶でもいいと思いますが、1人暮らしの防災用なら半分のサイズの方がいいでしょう。半分のサイズでも脂質は1日分が賄えるんじゃないかな。酷寒の中にカロリー不足で低体温症にならないためには向くかも知れません。
実験後に、楽天のレシピで沖縄料理「ポークたまご」 レシピ・作り方という、良いレシピがありました。焼いてから「もっと薄切りにしないとダメだった」と思い知るより、みなさんはこのような情報を参考に、良いポークたまごを作成なさってください。
野菜ジュースも、コスパなどの関係で900mlのペットボトルの物を購入しましたが、1人では飲みきれないので、500ml のペットボトルの物や、缶ジュースの形のほうがいいかと思います。
古新聞より使い易く、干した物をリボン状に切ったものは固形燃料の代わりに使えるほど良く燃える非常に優れた燃料です。枝や薪の火熾しでは大活躍しますし、手っ取り早くお茶を飲みたい場合などは、切った空きパックだけで沸かすことも可能です。リサイクルに出す場合と異なり燃やすのですから、ジュースや牛乳を飲んだ後は丁寧に洗う必要はありません。洗わないでパックを干して、乾いたら切って燃やすことも可能です。この無償で入手容易な燃料が極めて有用なので、アウトドア系の焚き火の動画で、火熾しに液体や固形燃料、ガストーチなどを使っているのを見ると、「この人は下手」と思うようになりました。
古新聞と特性が似ているが、新聞ほどは灰が飛ばないし火力が強い。都市部ではダンボールは古新聞や紙パックより入手しやすく、かつ一度に大量に得られる場合も多い。庭での実験レベルでは使い切れないほどです。また調理用の燃料として極めて有用であるので、ダンボールに言及していない「薪ストーブで防災ノウハウ」の類 (ほとんど全てがそうですが) は、実際には庭などでの実験もしていない可能性が高いと思います。
women and their small children breathe in amounts of smoke equivalent to consuming two packs of cigarettes per dayとの事です。女性は火の近くで調理をするし小さい子は目が離せないのでおぶって調理するのが煙を多く吸う原因です。注意しないと「煙草を2箱吸うのに匹敵」します。
カセットコンロと比較してメリットは
いずれにせよ、カセットコンロは1台あっても、カセットガスのボンベを多く備蓄している人は少ないでしょう。東日本大震災の時は、震源地から離れた首都圏でもボンベは入手困難ではなかったかな。仙台では行列だったみたいです。
一方、デメリットも多く
それで、空き缶でコンロを自作して廃材や新聞・ダンボール等を燃やす方法を第1選択にすべきとは言いませんが、このテクニックをマスターしておいて、それで震災時にはもっぱらカセットコンロを使ったとしても損するわけでは無いですし、どうしても必要になるケースもあると思います。こんな場合です。
東京都水道局の水道水をくみ置く際の留意事項について 〜第36報〜によると
だそうです。横浜市衛生研究所の準備は万端?災害用保存水は、より詳しいですね。しかし、保存期間を過ぎた水道水でも、掃除や便所に流すなどの生活用水にするしか使い道が無いわけではなく「煮沸すれば飲める」という事を知っていて、そして、それが実施できたらどうでしょう。味噌汁、お茶、湯冷ましなどにすれば、飲めます。この「沸かして飲む」というのはカセットコンロでは無理で、「燃料が無尽蔵」な空き缶コンロの本領発揮は所ではないかと思います。
災害時に薪を使った調理方法をサバイバルの手段として提唱するネット情報や書籍は色々ありますが、実際に災害を想定して、入手しやすい道具でコンロを作って入手しやすい燃料を使い、たとえば10種類の食事を本当に作ってみた上で情報発信しているものは少数です。大半は誰かが「役に立つ」と書いているのを見て、そうだと思い込んで内容を転載や引用で広めているだけでしょう。怪しい例として
見分け方は簡単で、実際に幾つも料理を作ったという証拠データ(実験で得られた数値、写真、ネットであれば動画も)と手順が書かれていれば、実際にやっていると判断できます。一方、漫画やイラストしか無かったら疑ってかかってください。「イラストを書くより写真を撮る方が簡単で費用もかからないのに、なぜ写真が無いのか」と。
私がここに書いてある事が絶対だとも最善だとも主張しませんが、私は全て実験しています。
アウトドア系の焚き火のテクニックは参考になる部分もありますが、「趣味で、自然の中で」料理する方法と、「非常時に、都市部で」料理する方法は違いが大きいです。
昔の飯盒炊爨 | いまのアウトドア調理 | このサイトの提案する空き缶炊爨 | |
燃料 | 薪 | 炭、アルコール、ガスのカートリッジ | 薪、小枝、古新聞、ダンボール、廃材 |
調理設備 | かまど | キャンプ用のストーブなど特別な道具 (アルコールストーブなら自作も可能) | 自作の空き缶コンロ |
調理器具 | 飯盒 | キャンプ用のクッカーなど特別な道具 | 台所にある鍋など普通のものを利用 |
作る料理 | ご飯、カレーなど | バーベキューなど趣味で色々な料理を作る | 主にもっと簡単な物 |
調理場所 | キャンプ場 | キャンプ場 | 庭や空き地、避難先の学校の校庭、公園などを想定 |
目的 | 教育学習 | 趣味 | 生存する |
アウトドア用のコンパクトな薪ストーブも幾つか販売されているようですが、これらを次々に購入して批評するだけの費用と時間は持ちあわせていませんが…宣伝の動画を見ると、これは風のない湿度の低い日に通常では入手困難な燃えやすい状態の薪を使って撮影しているのでは、と思うことが多いですね。木は、何年も乾燥させたり、果てはオーブンで乾燥させて水分を5%以下にすると、固形燃料のように良く燃えます。見分ける方法ですが、宣伝の動画を見て、煙が盛大に出ていて、枝の燃えていない側の端から泡がぶくぶく出ていれば、それは本当にその辺で拾い集めた枝を燃やしていると分かります。そうじゃなかったら…さぁ、どうでしょう。「生木なら、煙はともかく泡は必ず出る」とだけ言っておきます。
登山用のテクニックの方が参考になります。ウルトラライト系、遭難防止のテクニックなど。
根本的に違います。分類すると
薪ストーブ | このサイトの提案する空き缶コンロ | |
目的 | 部屋全体の空気を温める | 鍋の内容物だけを加熱する |
燃料 | 切り倒して2年間乾燥させた広葉樹の薪、 木質ペレットなどで費用が高く付く場合も | 古新聞、ダンボール、拾った枝、廃材、瓦礫 流通が機能していない状態を想定。費用ゼロ |
調理設備 | デラックスで高額な製品の薪ストーブ | 費用ゼロの自作の空き缶コンロ |
煙突 | あり | なし (つける事は不可能ではないが) |
燃やす場所 | 室内 | 室内で使うのは危険&煙が出るので不可能 |
燃焼時間 | ゆっくりと長時間燃やす (一晩中など) | 調理中の短時間だけ燃やす。調理後はコンロ 内の燃料が早く燃え尽きてくれると好都合。 |
薪の太さ | 太い薪をゆっくり不完全燃焼させる | 細い薪を短時間で完全燃焼させる |
火力調節 | ダンパで空気の量を減じ、酸欠の状態にして 薪が不完全燃焼する度合いを高めて弱くする | ダンパは無く空気の流れは制限せず燃料は 常に完全燃焼させる。火力は燃料の量で調節 |
煙を抑える装置 | 白金の触媒を使った高価で高性能なもの | 無し。腕次第。燃やすのが下手だと狼煙状態 |
煤、PM | 煙突があるので室内では抑えられている | 燃やす腕や風向き次第では沢山吸う羽目に |
火をつけたら | 放っておいてのんびりゆったり読書など | 絶えず薪などの燃料を操作する必要あり |
イメージ | ゆとり、贅沢 | 極限状態、生きるか死ぬかの分かれ目 |
目的が違い過ぎるため、薪ストーブの書籍に書かれているような知識は災害時の調理用ストーブの設計という点では参考にならないというよりかえって混乱の元にしかなりません。
一方、ホンマ製作所から出ている低価格の鉄板製薪ストーブのような物でしたら、防災用としては、本サイトで解説しているような空き缶コンロより安全性が高く便利ではないかと思います。 (調理がしやすいかどうか等は使ったことが無いため未知数ですが)
実際に購入した物に関して記載していますが、製造されてから商品棚に載って私が購入するまでに日数が経っているので、賞味期限は目安として割り出しています。
朝日新聞のアルミ缶2個で、非常食「サバメシ」を作ろうという記事から、防災科学技術研究所の内山さんの取り組みを知って感銘を受けました。小学生でも工作できるようにアルミ缶を用いるなどの工夫がされています。日頃から備えの意識を持ってもらうのが狙いとの事ですが、「アルミ缶を丈夫なスチール缶に替えれば1週間ぐらいは使えて実用になるコンロができるのでは」と思い立ちました。内山さんが開設していらっしゃる「国際サバメシ研究会」のホームページもぜひ、ご覧ください。
ffmpeg に関してはFFmpegで素早く正確に動画をカットする自分的ベストプラクティスを参考にさせていただきました。
日本キャンプ協会の用語辞典によると、
炊爨とは「煮炊きする」という意味。との事です。空き缶で製作したコンロで炊飯以外に料理も作るという意味で炊爨の字にしました。